最近のケースで、Kelly v Covance Laboratories Ltd [2015]の中で、雇用上訴審判所は雇用審判所の出した判決を支持し、職場でロシア語の使用を禁止した業務命令は直接的な人種差別、人種偏見に基づく嫌がらせにも当たらないとした。雇用者は、この業務命令を出すのに十分な理由があり、それは従業員の国籍とか元の国籍には無関係であると判断した。

この雇用者の取った行動を動物実験とこの業務から発生する安全保障という状況から鑑みると、ロシア語を話してはならないという要請をこの従業員にしたことは妥当であったという背景があった。それは、この従業員の挙動不審がその理由の一つであり、職場でロシア語を話さないことで英語を話すマネジャーが何が話されているかを理解できるという理由であった。

このケースにおいてはMrs Kellyはロシア人でCovance Laboratories Ltdに契約書分析員として雇用されていた。この会社は動物実験をする会社であり動物の権利擁護活動家から攻撃の標的にされていた。それは、会社の何人かの従業員に対しての暴力も含まれており、これらの活動家は彼らの動物の権利擁護のキャンペーンを広げるために身辺を偽って会社の内部情報を知るために従業員として働くなどしていた。

雇用主であるCovanceは、Mrs Kellyの採用初期の段階から彼女の働きぶりと彼女の所作に不審を抱いていた。Mrs Kellyの不審な行動は例えば携帯電話を仕事中に使用し、しかも携帯電話を職場トイレの中でロシア語で長い会話をしていたなどが挙げられていた。新入社員としての彼女の所作は十分に尋常ではないと、彼女の直属の上司であるMr Simpsonは認識し、彼は、彼女が直近で起こった動物の権利擁護活動家の会社への潜入を思い起こさせたのであった。彼女の上司は、彼女のとった挙動不審の原因として、彼女に職場でロシア語を話すことを止めるように指示をしたのであった。

労働審判所は、最初はこの業務上の指示は被雇用者の人種または出身国に連関しており、これは直接的な差別で嫌がらせを含むとして法律違反を構成する可能性があると考えたが、最終的には「差別」にはあたらないと判断した。雇用上訴審判所は、雇用審判所の下した最終判断に同意した。―なぜ雇用者がこのような指示を出したかという理由を見ることで、雇用者側としてはこの状況下における彼女の所作は十分に疑い深いものであって、会社の持つ特質を考えたら妥当な理由があったと考え、会社が動物実験を業務とする会社であるということから要請される安全保障を担保しなければならない状況を鑑みると、職場で交わされる会話は英語であることが重要である判断して「差別」にはあたらないと判断したのである。

雇用者は、職場で英語以外の言語の使用を禁止したり、制限を加えたりすることには、ビジネスを遂行のための正当な理由が無い限り慎重でなければならない。例えば、ロシア語が母国語のロシア人従業員の2人に、ビジネス外でも英語を話さなければならないと指示することは差別であると見なされる可能性がある。しかしながら、雇用者はこのことを正当化することが出来る場合がある。それは、例えば、もし他の従業員が彼らの雇用関係の中で(特定の言葉を理解しない)仲間に入れない、ということで除外されたりいじめにあったりする場合などである。このような事柄は、英国でビジネスを遂行している企業にとっては重要である。特に英国で活動するの日本企業の職場環境を考えると、そこには複数以上の英語以外の言語が話されている。すなわち、これは差別を引き起こす危険性があるということである。

日本企業のリスクとは、日本人でない従業員がこれを「差別」として問題にする可能性があるというリスクである。それは日本語がビジネスで、又はビジネス外で話されている時、その場にいる日本語を理解しない従業員が疎外されたり、いじめにあったりという議論が持ち上がる可能性があるということである。雇用者は、このような問題に対して、差別による損害賠償請求の問題になる前に 注意を払うべきである。

この記事に関するご質問は、フィリップ・ロス法律事務所の弁護士の中田浩一郎、(Koichiro.nakada@philipross.com)、または中田陽子(yoko.nakada@philipross.com)までお願いいたします。
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