英国には、調停や仲裁に関する政府機関のアドバイザリーサービス(ACAS)がある。この機関は、公平中立な立場でアドバイスを無償で提供する。ACASは、雇用関係に関する行動規範(ACAS Code)を作成し、これを雇用者が懲戒や苦情手続きに適用するように要請している。この行動規範に違反した場合には、罰則として、雇用者が雇用審判所で被雇用者に支払う補償金を加算することがある。この行動規範は、英国議会によって制定されたものである。

しかしながら、この行動規範は、原則として従業員の不行跡や雇用主の違法行為に基づく解雇にのみに適用されるにも関わらず、多くの企業の人事部の関係者は、あらゆる解雇に適用されると考えているようである(実際にはそうではないにも関わらず)。

ACASの行動規範の適用のない解雇とは、「一定の重大な事由に基づく解雇」である。それは、雇用者と被雇用者の雇用関係が修復不能なほど破綻しているという事由に基づく解雇を含んでいる。

Hussain 対 Jurys Inns Group Ltd [2015] の雇用関係事件では、SさんはP社に雇用されていたのだが、事業再編で彼女の職がリダンダンシーになったことから、彼女はよりジュニアポジションに応募して採用された。彼女はこの応募手続きの中でLさんから不当な扱いを受けたと感じ、Lさんに対して苦情申し立てをした。SさんはL さんに対する苦情申し立てに関連してLさんに面と向かって強く文句を言ったことが引き金となり、懲戒手続きの懲戒対象となった。

Sさんの苦情申し立てが棄却されると、Sさんは病気休暇に入った、そして彼女は不行跡を理由に書面での警告を受けた。
S さんはこの2つの決定に対して不当であると主張したが不成功に終わった。不成功に終った調停の後、P社はSさんをミーテングに呼び出し、彼女にLさんとの関係修復を良く考えるように促し忠告した。

このミーテングでSさんは職場復帰の意思を表明した。しかしながら、彼女はLさんに対する今までのコメントを撤回や取り消しをすることはなかった。そして、このミーテングの最後にP社は、2人の職場での関係が修復不能なまでに破綻したことを理由として「一定の重大な事由」に基づいて解雇した。

雇用審判所は、Sさんの解雇は不当であると判断し、その理由は、P社がACASの行動規範に従うことを怠ったというものであったが、Pさんはこの判断に対して雇用上訴審判所に上訴した。

雇用上訴審判所においても、この解雇が不当解雇であると認められたが、雇用上訴審判所はこのケースではACASの行動規範はこのケースには適用されないと判断し、この行動行動規範は、雇用者のより厳格な義務に対してのみ適用されることを明らかにした。従って、雇用審判所が認めた補償金の加算は、上訴審判所によって否定された。

さまざまな雇用関係の紛争の中では、時に、労使関係の破綻と従業員の不行跡が重なり、あるいは交錯する場合がある。そのような場合には、ACASの行動規範が適用になるか否か必ずしも常に明確ではない。このような状況下において、雇用者は、十分な注意を払う必要がある。雇用者は人事チームと懲戒と苦情手続きの責任者にこのACASの行動規範を十分に理解をさせ、遵守させる事が重要である。

雇用関係のなかで起きる様々なケースに対応する時には、もしこのケースが雇用審判所の判断を仰ぐことになった場合のことを仮定した上、雇用審判官の立場での物事を考えることが重要である。そうすることによって、雇用者が被雇用者に、可能な限り公平、公正かつ適切に対応をすることが可能になり、雇用関係法の罰則を回避することができるようになる。

本件に関するご質問などございましたら、弁護士中田浩一郎 Koichiro.nakada@3hrcs.comまたは、英国弁護士中田陽子yoko.nakada@3hrcs.comまでご連絡ください。
For further information, please contact Koichiro Nakada – Head of Japan Business Group (koichiro.nakada@lewissilkin.com) and Yoko Nakada - Senior Associate, Deputy Head of Japan Business Group (yoko.nakada@lewissilkin.com).
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