Apr 2021 – コロナウイルスワクチン接種に関するQ&A

英国がCovid-19ワクチン接種プログラムを進めるにつれ、雇用主側は雇用法における多くの困難且つ未検討の問題に直面している。ここで紹介するQ&Aは、雇用主が従業員にワクチン接種を義務付けることができるかどうか、義務化の代替案、ワクチン接種のための休暇、およびその他の問題をカバーしている。


在職中の従業員にCovid-19ワクチンの接種を義務付けることはできるか?

業員に予防接種を義務付けることは、英国の法律では検討されたことがない。 在職している従業員全員にワクチン接種を要求することが出来る雇用主がいるかもしれないが、これはごく少数のケースであろう。

ワクチン接種の義務化に関する主な法的問題は、勤続2年以上の従業員が接種を拒否して解雇された場合に、守られるべき特性に関する差別の請求をする可能性があることだ。したがって、予防接種の強制を提案している雇用主は次の点を考慮する必要がある。

  • 勤続2年以上の従業員が予防接種を拒否した場合に解雇するのに正当な理由があるかどうか。雇用主がリスク評価を実施した上で、予防接種がCovid-19にかかるリスクを軽減する最も合理的に実行可能な方法であると示すことができれば、理論的には健康と安全の要件としてワクチン接種を義務付けることができる。

    ただし、政府は医療・介護分野では最大の雇用母体だが、従業員に予防接種を義務付けてはいないため、一般の雇用主は組織内において異なる立場を取る場合には、より強固な理由付けが必要となる。
  • 医学的、妊娠または信仰などの理由で例外を設ける。 そうしないと、守られるべき特性を持つ従業員からの差別請求につながる可能性がある。
  • 他に差別のリスクがあるかどうか。 たとえば、すべての成人にワクチン接種の機会が提供される前にワクチン接種を義務付けることは、若い従業員を差別することになる。
  • 該当する規定を常に見直しておく。 最終的に「集団免疫」が確立された場合、強制的な政策を正当化することは困難になる。
  • 公認された組合または適切な従業員の代表者と協議をする。

ワクチン接種を義務付けている場合、それを拒否した従業員を懲戒または解雇することはできるか?

これは、従業員が拒否する理由と、不当解雇を請求できる権利を有する勤続2年以上の要件を満たすか否かよって異なる。

異議の申し立てが障害、妊娠、信仰などの守られるべき特性に関連している場合、従業員を懲戒または解雇することは差別にあたる可能性がある。 もしリスク評価に適っている場合、大多数の雇用主はこういった場合には例外を設けるであろう。

従業員が差別に関する法律に基づいて保護されていない場合に主に問題となるのは、勤続2年以上であるかどうかである。もしそうであれば、ワクチン接種拒否のために解雇された場合、その従業員は不当解雇の請求をする可能性があり、雇用審判所は雇用主の解雇決定の合理性を評価することになる。

従業員を解雇する前に、雇用主は解雇以外の選択肢を検討する必要がある。これには、例外の許可、別の職務への再配置、他の安全対策の実施、または従業員の在宅勤務継続の可能性(可能な場合)が含まれる。

公正な解雇を確立するために、雇用主は、さらにこれが既存の雇用契約および方針にどのように適合するかを考慮する必要がある。 たとえば、健康と安全に関する規定に違反している場合は、既存の雇用関係に関係するポリシー文書の中に解雇につながる可能性のある例としてそのことが引用されているかを確認すべきである。


従業員に予防接種を受け入れるよう強く勧めることはできるか?

すべての雇用主がそうすべきである。

すべての状況において、雇用主は1974年施行の労働安全衛生法に基づき、職場のリスク軽減のための合理的な措置を講じる義務がある。従業員自身、そして職場の他のすべての人を守るために予防接種を奨励することがリスク軽減の一つの方法である。


予防接種規定を設けるべきか?

従業員にワクチン接種のインセンティブを提供する場合(以下を参照)または(通常は)接種を義務付けている場合は規定を設けるべきである。次に、規定に基づいて提供されるインセンティブの条件とともにアプローチについて説明および伝達をすべきである。


従業員に予防接種を受け入れるためのインセンティブを提供できるか?

可能性としてはでき得る。 ワクチン接種を奨励するインセンティブを提供することは米国では一般的に議論されているアプローチだが、英国では一般ワクチン接種が広く進んでおり、インセンティブが不必要である可能性があり、これが一般的となるかどうかはまだ分からない。

インセンティブは、バウチャー、現金、または単に従業員に予防接種の予約に出向くための有給休暇を提供することなどが考えられる。(以下を参照)

インセンティブを導入する雇用主は、予防接種を受けることができない守られるべき特性(妊娠、障害、信仰など)を持つ従業員へのアプローチを検討する必要がある。正当な健康と安全の目的を満たすために相当な手段として、予防接種を受けた従業員のみへのインセンティブ提供を正当化することは可能かもしれない。


個人的にcovid-19ワクチン接種を受けるために、従業員に支払いをすることはできるか?

現在ワクチンは市販されておらず、当面購入できるようになる可能性は低いため、これは現在のところ問題にはならない。


誰がワクチン接種を受けたかに基づいて、オフィスへの復帰を管理できるか?

可能性としては出来得る。在宅勤務が可能な従業員を有する雇用者の中には、予防接種を受けた人を段階的にオフィスへ復帰させることを検討しているところもある。

若い成人人口のほとんどが7月末まで初回投与を受けられない可能性を考えると、雇用主はそのような要件の導入がいつの時期に適切であるかも考慮する必要がある。

ワクチン接種済みか否かに基づく職場復帰方針は、他の守られるべき特性(障害、宗教、妊娠など)を持つ従業員に対する差別になるリスクがある。

雇用主が予防接種を受けた従業員のオフィスへの復帰を義務付けた場合、これは予防接種を受けたがオフィスへの復帰を望まない従業員にも問題を引き起こす可能性がある。このことは、人員配置の決定に関するQ&Aで扱われているものと同様の法的問題が発生する。 雇用主は、障害のある従業員に関して特に注意を払う必要があり、障害のある従業員にとって在宅勤務の取り決めを継続することは合理的な調整であり得る。


従業員に予防接種状況を通知するように要求できるか?

おそらく可能だが、これは雇用主のリスク評価においてワクチン接種状況がどのような役割を果たしているかによって異なる。 このデータ収集は、特定の目的に必要且つ関連している必要がある。


予防接種を受けるために、従業員が勤務時間中に休暇取得することを許可する必要があるか?

従業員が病院の予約のために休暇を取ることについての一般的な法律上の権利はないが、ほとんどの雇用主はCovidワクチン接種のための休暇取得を許可すると予想される。

一部の雇用主はインセンティブとして有給休暇の提供を希望するかもしれないが、従業員に有給休暇を提供する法的な義務はない。(上記を参照)


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