国際的タレント人材とフランスの魅力

第一部

フランスの法律事務所、マンデル・エ・アソシエ法律事務所のオリビエ・マンデル氏より、「国際的タレント人材とフランスの魅力」と題して、現地雇用には欠かせないフランスでの就労ビザの種類について、全4部に渡っての解説を頂きます。

本日は第一部として、高度なスキルを持つ従業員向けの滞在許可について、解説いただきました。

1. はじめに

フランスは、国際的企業にとって魅力的な投資先です。経済協力開発機構(OECD)のメンバーであるフランスと日本は特別かつ非常に古い関係にあり、両国の企業は共にお互いの市場への投資や海外での事業展開への関心を高めています。
政府機関であるBusiness Franceによる2020年度の報告書「フランスにおける外国投資」によると、フランスは2020年に1,215件の新規外国投資決定を獲得、2019年比ではマイナス17%、世界全体でマイナス33%の減少を記録し、2019年のポジティブな勢いを中断させましたが、投資先としてのフランスの魅力は変わっていません 。

健康危機にもかかわらず、投資先としてのフランスに対する信頼は再び高まっており、Business France/Kantars社が実施したフランスの魅力に関する調査によると、フランスに進出した外国企業の経営者の9割がフランスへの投資にポジティブな印象を寄せています。さらに、10人に9人近くの最高経営責任者(85%)が、フランスは魅力的な外国投資先であると信じています。

このような背景から、多くの日本企業はフランスでの事業を拡大するために、現地労働者を雇用するか、日本の母体企業で既に働いている経験豊富な日本人の従業員を赴任させることを検討しています。

そういった意向の雇用主は、労働法典(Code du travail)と外国人の入国・滞在および亡命の権利に関する法典(CESEDA)に準拠したフランスの労働・移民規制を遵守しなければなりません。これらの法的義務に違反した場合、企業はフランス行政当局による重い行政罰や訴訟にさらされる可能性があります。

フランスで3ヶ月以上働こうとする日本人労働者は、滞在許可証(titre de séjour)を申請し、労働許可証(autorisation de travail)の交付を受けなければなりません。また、入国にはビザが必要であり、出発前に日本(居住国)で取得する必要があります。

https://www.businessfrance.fr/discover-france-news-annual-report-2020-foreign-investment-in-france

しかし、フランスに設立された企業と雇用契約を結んでいるいくつかのカテゴリーに属する従業員は、タレント・パスポート許可証(”Titre de séjour Passeport Talent”)と呼ばれる特定の滞在許可証を取得することができます。

この特定滞在許可証には、主に3つのメリットがあります。

  • 保有者は、場合によっては4年もの間フランスに滞在し働くことが可能
  • タレント・パスポート許可証の法的条件を満たす申請者は、個別の労働許可証(「autorisation de travail」)の申請は不要。実際、タレント・パスポート許可証の所持は、労働許可証の所持と同等とみなされる
  • タレント・パスポート許可証所持者の同伴家族も、複数年の滞在許可証を所持可能で、配偶者及び18歳の子女に職業活動を行うことを認める。家族は、簡略化された同伴家族手続き(”procédure simplifiée famille accompagnante”)を利用可能。従って、「家族再統一」(”regroupement familial”)を申請せずに滞在許可証を取得可能

追加の事務手続きは必要ありません。

2. タレント・パスポート取得可能な高度なスキルを持つ従業員

いくつかのカテゴリーに属する従業員はタレント・パスポートの取得が可能です。

今回の4回の連載では、「高度なスキルを持つ従業員」「グループ内異動者」「有資格者」「新しく革新的な企業の従業員」「研究者」を主なカテゴリーとして、解説していきます。

前半では、「有資格者」と呼ばれる高度なスキルを持つ従業員と、それより低い資格を持つ従業員の要件を確認していきます。

3. 手続き

パスポート・タレント滞在許可証の各カテゴリーについて、日本人従業員が渡仏前に日本に居住しており、フランス滞在期間が12ヶ月未満の場合、日本にあるフランス領事館は「パスポート・タレント」という記載がある滞在許可証(VLS/TS)に相当する長期滞在ビザを発行することに注意する必要があります。

フランスに到着後、3ヶ月以内にそれを有効化する必要があります。

フランスの滞在期間が 1年以上の場合、領事館は「タレント・パスポート」の記載がある3ヶ月の長期滞在ビザを発行します。

日本人従業員がフランスに到着した際、居住地の県で滞在許可証を受け取らなければなりません。

いずれの場合も、フランス国に税金を納め、公式な書式に記入し、フランス語に翻訳された証拠書類を添えて行政機関に提出する必要があります。この点に関し、専門のフランスの弁護士の支援を受けることを強くお勧めします。

オリビエ・マンデル氏
パリ弁護士会認定(フランス)
マンデル・エ・アソシエ法律事務所

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次回はパスポート・タレント滞在許可証のうち、ベンチャー企業の労働者や企業内転勤者向けのカテゴリーについて解説していきます。
もし特定のケースにおいて、具体的なアドバイスが必要な場合はマンデル・エ・アソシエ法律事務所までご連絡をお願い致します。