Jun 2020 – Covid-19ロックダウンは母親たちにプレッシャーをかけ、英国の性別による賃金格差に影響を与える可能性がありうるか?

英国で報告されている2019年の性別による賃金格差は17.3%だが、財政研究所(IFS)が実施したレポートによると、ロックダウン解除後、コロナウイルスのパンデミックとそれが働く母親たちの職業生活に及ぼす長期的な影響の結果として、性別賃金格差を狭めるのを遅らせる可能性があるかもしれない。

コロナウイルスのパンデミックが起こる前、女性が男性より賃金が得られる仕事に就く可能性は低かったことはよく知られている。 つまり同様の役割を担っている労働者の間でも、特に労働者が親になった後は、女性の給与が減り、時給に性別格差が継続しているという証拠がある。
4月~5月上旬にかけて行われたIFSのレポートによると、ロックダウン中、一家の母親は父親よりも稼働日に仕事に費やす時間が短く、家事や育児に費やす可能性が高いことが分かった。 興味深い点は次のとおりである。

• 異性の両親がいる世帯の母親は、ウィルスが蔓延する前は父親の有給の仕事の60%の仕事をしていたのに対して、ウイルスが蔓延してからは父親の3分の1しか有給の仕事をしていない。

• 仕事と同時に育児や家事など仕事以外のことに費やしている時間が、母親は本来の労働時間のほぼ半分(47%)であるのに対し、父親は30%である。

• 父親は2014年~2015年と比べ平日約2倍の時間を子育てに費やしているが、母親は父親よりも2.3時間長く、平均して1日あたり10.3時間子供の世話をしている。

レポートの調査結果のいくつかは、ここ数十年の間に男女間の賃金格差を狭めることで叶った進展の一部を覆すリスクがあることを示唆している。 covid-19危機の発生以降に収集された他の労働市場調査に即し且つIFSの現行の調査結果に基づいて、女性は子育ての責任をより多く分担している可能性があり、ロックダウンが始まってから本来すべき労働を中止した可能性が高くなっている。 また、女性が有給業務をしている場合でも、女性の方が男性よりも勤務時間が短く、仕事と育児を同時にしている可能性が高くなっている。

平均して、母親はcovid-19危機の間に(自発的、一時的もしくは恒久的な失業を通じて)有給労働から後退する可能性が高く、家庭の責任をより負う可能性が高く、その結果、彼女らの収益見通しは長期的に打撃を受ける可能性がある。例えば、過去の調査によると、女性が子供を産む時に休みを取る時間と職場に戻ってからの労働時間数の短縮は長期的な影響があり、将来的に時給が減ることが示されている。 この危機が父親と母親の労働時間に及ぼす影響の違いは、父親よりも母親のキャリアの進展と収入の見通しに大きな悪影響をもたらすだろう。

covid-19危機は、全体的に前例のない労働パターンの混乱をもたらした。誰がどこで、いつ、どのように業務を遂行するかという点での変化が見られたが、親の時間と仕事に大きな圧力がかかっていることは明らかである。 ロックダウンとそれに続く家庭や職場の急速且つ永続的な変化の結果として、性別と仕事に対する意識が変化していくかどうかを見るのは興味深いだろう。

詳細については、中田陽子(yoko.nakada@lewissilkin.com)または中田浩一郎(koichiro.nakada@lewissilkin.com)にお問い合わせ下さい。