
Apr 2026 – Earned Settlementの提案:Skilled Workerスポンサーにどのような雇用法上のリスクが生じるか?

政府は現在、永住権(settlement)の取得要件について、資格基準および取得までの期間の双方を大きく変える可能性のある制度変更を検討している。Skilled Workerスポンサーがこれらの変更への対応を検討する中で、本稿では短期および中長期的に想定される雇用法上のリスクについて考察する。

現行制度では、多くのスポンサー企業は、通常5年程度という比較的予測可能な「永住権取得までの道筋」を前提に計画を立てている。これは、当該個人が永住権を取得し、もはやスポンサーによる支援を必要としなくなる時点を指し、スポンサー義務および移民関連費用(Immigration Skills ChargeやImmigration Health Surchargeなど)もその時点で解消される。
手続きはどのように変わるのか?
現行制度では、永住権取得は主に英国での滞在期間に基づき、ルートごとに追加要件が課されている。Skilled Workerの場合、対象となるビザルートでの滞在でなければならず、スポンサーは引き続きライセンスを保持している必要があり、且つ所定の基準額を超える給与条件のもとで継続して就労していることを確認する必要がある。しかし政府は、現行の制度を一新する「earned settlement(稼得型永住権)」モデルの導入を提案している。
この新制度では、すべての申請者が、人柄(character)、統合(integration:イギリス社会・コミュニティへの順応と統合力)、社会への貢献(contribution)、居住(residence)といった要素に基づくコア要件を満たす必要がある。居住要件については、通常10年(ただし学位未満レベルの職種に従事するSkilled Workerは最大15年となる可能性あり)を基準としつつ、課税所得や国家への貢献度などに応じて期間が増減する仕組みとなる。後述するように、定住への道筋に関するこの新たな不確実性は、スポンサー企業にとって課題となり、法的リスクにも影響を及ぼすであろう。
例えば、高所得者については永住権取得までの期間が大幅に短縮される可能性があり、永住権申請直前3年間において£125,140以上の課税所得があった場合、最大7年の短縮が認められる見込みである。一方で、その対極にあるケースとして、ビザの滞在期限を6ヶ月以上超過した申請者については、手続き期間が最大で20年延長される可能性がある。
このように、新制度では多様な要素が評価対象となるため、永住権取得までの道筋はより個別的かつ流動的なものとなるであろう。
即時的な影響は何か?
Earned Settlementに関する提案についての政府の協議文書によれば、新制度は、規則変更時点でまだ定住資格を付与されていないものの、すでに英国に滞在している者すべてに適用する方針としていることが確認されている。これは、経過措置期間を設けることなく、変更が遡及的に適用される可能性があることを意味する。
労働者の立場から見れば、その影響は甚大である可能性がある。新制度の下では、永住権取得目前のSkilled Workerであっても、資格要件を満たすまでにさらに不確定な年数を要することになり、その時点までスポンサーによる支援が必要となる可能性がある。
スポンサーにとっては、当該個人が近い将来に永住権を取得すると予想していたにもかかわらず、多額の費用をかけて支援期間を延長しなければならないことを意味するかもしれない。
そのような状況下で契約解除は正当化されるのか、それともスポンサー企業はスポンサーシップを継続し、この追加費用を負担する必要があるのか。スポンサーシップの延長を見送る決定は、差別や不当解雇の観点からリスクを生じさせる可能性がある。これらは本質的に、例えば労働者を当初3年間のみスポンサーし、5年間ではなかった場合など、スポンサーが現在直面している考慮事項やリスクと同様である。しかし、後述するとおり、新たに提案されている制度下での永住権取得への道のりに関する大きな不確実性により、この判断はこれまでとは著しく異なる文脈の中で行われることになる。

差別リスク
スポンサーが、予想以上に長期にわたるスポンサーシップを余儀なくされた場合、それ以上の期間その労働者を支援することを望まないと判断し、その結果として契約を解除した場合、これが間接的な人種差別にあたるリスクがある。英国およびアイルランドの国民には就労制限がない一方、スポンサーシップを必要とする労働者は、settlementの取得期間が長くなるような追加の資格要件によって不利益を被ることになる。間接的差別は、正当な目的を達成するための比例的手段であると客観的に正当化できる場合には認められる余地がある。しかしながら、どの程度の対応がこの基準を満たすと評価されるのかについては、現時点では極めて不透明である。
スポンサーシップと雇用に関する代表的な判例としては、「オズボーン・クラーク対プロヒット」事件が挙げられる。この事件において雇用控訴審判所(EAT)は、すでに就労資格を持っていない研修契約候補者を排除するという法律事務所の方針は、違法な間接的人種差別にあたると判断した。EATは、コストを理由とする主張を退け、採用は能力・適正に基づいて行い、スポンサーシップの可否についてはその後検討すべきであると述べた。本件は採用段階に関するものであり、スポンサー期間の延長を直接の対象としたものではないが、スポンサーシップの文脈において、コストを理由とする間接的人種差別の正当化に対して審判所が慎重な姿勢を示していることを示す事例である。
スポンサー企業がスポンサーシップの延長を拒否する場合、その判断は主としてコストに基づくものと受け止められる可能性が高い。一般論として、コストのみを理由とする間接差別の正当化は認められにくい。しかし、コストに関連するより広範な経済的要因が存在する場合には、正当化事由として考慮され得る可能性もあり、必ずしもコストだけが判断要素となるとは限らない。想定外のスポンサー期間延長に直面するスポンサーには、審判所が考慮し得る他の正当な懸念が存在する可能性がある。
例えば、スポンサー側は、ある時点でスポンサー費用が終了することを前提として予算を策定している可能性がある。予期せぬ延長は、事業計画や人員計画に支障をきたすおそれがある。また、新制度の下では、定住資格の取得要件が、給与水準、犯罪歴、過去のビザ遵守状況など、複数の要素に左右される。このため、労働者がいつ定住資格の取得要件を満たすのかを予測することは困難になる。
さらに、これほど異なる制度的背景の下でもなお、Osborne Clarke判決が引き続き妥当性を有するのかという点も検討課題となる。同判決は2009年のものであり、現行のスポンサーシップ制度よりかなり前の判断であるが、依然として拘束力を持っている。その中核的な考え方、すなわち「選考は職務への適性に基づいて行われるべきである」という原則は、内務省(Home Office)の行動規範および平等・人権委員会(Equality and Human Rights Commission)の雇用規範によっても補強されている。
もっとも、Osborne Clarke判決および内務省の行動規範はいずれも、雇用主にスポンサーする義務があるわけではないことも明示している。結局のところ、この見解は未検証のままであるが、移民制度がさらに抜本的に変更されつつある現在、同事件が現在であれば異なる判断に至る可能性、あるいはスポンサー期間の延長には同判決の原則を適用すべきでないとする主張は、以前よりも一層説得力を持つに違いない。なお、同判決が下された当時、スポンサー制度導入以前の就労許可制度における費用は190ポンドに過ぎなかったことに留意すべきである。これは、新たな提案の下で想定されるスポンサーシップの高額な費用や不透明な所要期間とは大きく異なる。
不当解雇リスク
スポンサーを受けている個人が「労働者(worker)」や自営業者ではなく「従業員(employee)」である場合、不当解雇請求のリスクが生じる。不当解雇の申し立てに対して抗弁する場合、スポンサーはどのような「公正な解雇理由」に依拠することになるのであろうか。もしスポンサー企業が制度上はスポンサーを継続できるにもかかわらず、コスト上の理由から継続しないことを選択した場合、当該個人は既存の在留許可が失効すると就労権を失うことになる。就労権を失った場合には違法性を理由とする解雇が公正と認められる場合があるが、実務上、このケースでは、在留許可が失効する前に解雇が行われる可能性が高い。同様に、その役職自体が不要になったわけでもない。このため、スポンサーは、おそらく「その他の相当な理由(some other substantial reason:SOSR)」という包括的な条項に依拠する必要があると考えられる。このような状況については、現時点では判例上十分に検証されていない。
SOSRによる解雇理由はあらかじめ限定されたものではなく、その解雇が正当化されるか否かは、事実関係に照らして理由が真実かつ合理的であるかどうかにかかっている可能性が高い。スポンサー側の主張としては、事業計画や予算編成が従前想定されていた定住資格取得までの道筋を前提としており、より長期にわたるスポンサーシップにかかる費用を負担する余裕がない、という点が挙げられるだろう。また、上記で触れたとおり、新たな定住資格制度に伴う不確実性も、関連事情として考慮され得る。したがって、こうした主張は証拠によって裏付けられる必要がある。
解雇には、手続き上の公正さも求められる。解雇以外の選択肢を検討したり、被スポンサー従業員と状況を話し合ったりすることなく、性急に行動したスポンサーは、手続き上不公正と評価されるリスクがある。また、このような場面では、スポンサーが認識していない現実的な代替案が存在する可能性もある。例えば、ある移民ルートで手続きを進めている人が、実際には別のルートの要件を満たしているケースは珍しくない。例えば、当該従業員がパートナーのSkilled Workerビザの扶養家族として滞在する選択肢を有する可能性や、その従業員の私生活上の事情によりパートナールートの要件を満たす場合が考えられる。
現時点では、これらの移民制度改革は、先ごろ成立した雇用権利法(Employment Rights Act)に先立って施行される見通しだ。つまり、この規則が施行されれば、勤続2年以上の従業員のみが不当解雇の申し立てを行うことができ、補償額は1年分の給与か118,223ポンドのいずれか低い方の金額に制限されることになる。
しかし、同法に基づく改革が施行されると、状況は大きく様変わりする。勤続要件は6か月へと大幅に短縮され、不当解雇に対する補償額の上限も撤廃される予定である(2027年1月施行予定)。新制度の下では、不当解雇は差別請求とほぼ同等の財務リスクを伴うことになる。したがって、不当解雇請求が認められた場合、そのコストは極めて高額となり得る。特に、当該個人が他の職を得られない場合や、同等の給与を確保できない場合には、その傾向が顕著である。他の在留資格を有しない者は、この損失を軽減することが困難であり、その結果、元スポンサー企業はリスクにさらされることになる。このため、企業は両改革プロセスの施行時期について、継続的に注視する必要がある。

中長期的な検討事項
採用方針:
前述の通り、新提案の下では高所得者が有利となり、最短3年で定住資格を取得できる可能性がある。課税所得が50,270ポンドを上回る場合には、最短5年での定住が可能となり、現行制度と同程度の水準が維持される見込みである。一方、これらの水準に満たない労働者については、スポンサー期間が長期化し、高額なコストを伴うことから、スポンサーが懸念を強める可能性が高い。スポンサーがリスク軽減のため、例えば「定住資格の取得までに5年以上を要すると見込まれる候補者は採用しない」といった採用方針を導入することは、法的に許容されるのであろうか。
この点の分析は、スポンサー期間の延長時点で生じ得る差別リスクと概ね同様である。ただし、新制度を十分に認識した上で、そのような方針を積極的に採用したスポンサーに対しては、移行期間なしに規則が変更され、予期せぬ事態に直面したスポンサーの場合に比べて、裁判所が客観的正当化の主張に慎重な姿勢を示す可能性がある。とはいえ、定住取得時期の予測が一層困難になることに伴う人員計画上の不確実性を理由とする主張は、なお説得力を有し得る。
給与に基づく加速措置:
政府は、課税所得に応じて永住権取得までの期間を大幅に短縮する仕組みを提案している。このため、スポンサー企業が、被スポンサー従業員に対して的を絞った昇給を検討する明確なインセンティブが与えられることになる。場合によっては、数年間スポンサーを継続するよりも、昇給の方が企業にとって負担が軽いこともあり得る。
どんなリスクを伴うか?
- 多大な財務的負担:
前述の通り、労働者は定住権を申請する前に、3年間にわたり高い給与を得ている必要がある。提案は課税所得を基準としており、つまり給与天引きによる福利厚生や慈善寄付を差し引いた後の給与が考慮される。これはスポンサーにとって多大な経済的負担となる可能性がある。 - 人種差別リスク:
賃金の昇給を移民申請の結果と結びつけるような戦略は、差別を招くリスクを伴うため、慎重に適用する必要がある。法的リスクのみならず、労使関係の観点から見ても、このような措置は報酬体系に不公平さを組み込んでしまうことになる。 - 性別および障害による差別リスク:
3~5年にわたる所得実績を基準とする制度設計は、育児休暇を取得した人や、家庭の事情に合わせてパートタイム勤務をしていた人にとって不利に働くことになる。統計によると、こうした状況にある労働者の多くは女性である。同様に、長期の病気や障害を抱え、長期間の欠勤歴がある人や、その状態によって収入能力が低下している人も、この適格要件を満たせない可能性が高い。
これらのグループが適格要件の適用除外措置の対象となるべきかどうかについて、政府は現在検討を進めている。この問題に対処するためには、かなり複雑な規則を設ける必要があるだろうことは間違いない。
しかし、スポンサーは、改革後の制度においてこの問題がどのように扱われるかによって(もし扱われるとしても)、差別リスクが完全に排除されるとは限らないことに留意すべきである。

スポンサー企業は永住権取得を早めるためにどんな支援ができるのか?
「earned settlement」モデルでは、課税所得、語学能力、統合状況、社会的貢献といった要素に基づく、より幅広い「加速要因」および「減速要因」が導入される予定である。スポンサーにとっては、人員計画や管理が一層複雑化することを意味する。また、定住を目指す者に対してスポンサーが求める要件について、より創造的な対応が求められる可能性もある。
例えば、地域社会での活動が3~5年分に相当する大幅な短縮につながるとされている。多くのスポンサーが責任ある企業活動を求めているが、本制度の下では、より踏み込んだ関与が必要となる可能性がある。ただし、どのような貢献が評価対象となるのか、その評価方法については、「earned settlement」の協議文書に詳細は示されておらず、その内容が「広範な」ものでなければならないと見込まれている。
もちろん、個人にとっては長期的なメリットがあるかもしれないが、スポンサー側が雇用条件に過度なボランティア義務を課すことになれば、法的な面でいくつかの難しい問題が生じ得る。この活動は有償であるべきか、また、スポンサー給与要件を満たすためにフルタイムで働く労働者が、そのような活動の時間を確保できるのか、といった点が問題となる。
スポンサーにとってのもう一つの選択肢は、スポンサー対象の労働者に語学研修を提供することが考えられる。欧州言語共通参照枠(CEFR)のC1レベルの英語能力を有する場合、基準年数から1年の短縮が認められる可能性がある。ただし、この措置による短縮期間は1年に過ぎないため(他の要件では最大7年の短縮が可能)、その効果は限定的である。
スポンサーは今、何をすべきか?
現時点では、「earned settlement」に関する方針は最終決定には至っていないが、協議期間(2026年2月12日終了)後、速やかに制度化が進められる意向が示されている。新制度を実施する移民規則は、早ければ2026年4月にも導入される可能性がある。
このため、現在スポンサーしている従業員を精査し、それぞれの個人がどのような影響を受け得るのかを把握することが、重要な対応事項となる。なお、「earned settlement」に関する提案については、今後も定期的に最新情報をお届けする予定である。
(※本記事は、英語原文を日本語に翻訳したものです。)
特定のケースにおいて具体的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所の Li Xiang弁護士Li.Xiang@lewissilkin.com まで、ご連絡をお願いいたします。


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