Dec 2020 – 英国就労ビザへの新しいポイントベース移民システムの導入

労働を目的とする移民について、10月中旬の移民法の改正に関する政府発表は、多くの点でむしろ拍子抜けしたものであった。 過去2年間、「新しい」ポイントベースの移民制度に関する政府の計画を説明した一連の報告書と政策の発表が続いた。そのため、その主要な変更点に関しては、驚くに足るものではなかった。

そうは言っても、2020年12月1日から稼働する新しいシステムは、現在のポイントベースシステムが12年以上前に導入されて以来、スポンサー付きの移民にとっては大幅な改定の1つである。 2020年12月31日にEEA国籍保持者の域内の自由な移動が終了するとともに、英国で就労を希望する外国人にとってはポイントベースシステムが唯一の選択肢となる。 したがって、ビザの要件は、今後数年間、英国の労働市場を成長させる上で大きな影響を及ぼすであろう。

Tier2(General)の終了とSkilled Workerの導入

主要なニュースとしては、Tier 2(General)ビザが「Skilled Workerルート」として始動することである。 最近の学生ルートの変更と同様に、ビザの基本的な部分はほぼ同じである。 ただし、雇用者や従業員にとって制度がより機能しやすくなり、有益となり得る変更点がいくつかある。

最初に留意すべき点は、これらの変更は、いまだスポンサーシップ制度の下でのビザのままである、ということである。 潜在的なSkilled Workerは、Skilled Workerのスポンサーライセンスを保持している雇用主から、特定のスキルと給与の額を満たす仕事のオファーを受けている必要がある。この新しい ビザ制度の下では、どのような雇用主の下でも働けるというわけではなく、EEA国籍の保持者が現在享受している、「自由な移動の権利」よりもはるかに制限が厳しくなる。

Skilled Workerルートの規定は、最新のSkilled Worker補足資料に記載がある。 それらは、有効性、適合性、適格性、財務的、および犯罪歴の要件に分けられる。 まず、申請者は、スポンサーシップ、職務における適切な技能レベル、および英語スキルから50の必須ポイントを取得する必要があり、また、申請者は給与に関連して20ポイント、合計70ポイントが必要になる。

Intra-Company(企業内異動)を歓迎

現在、企業内異動ルートおよび企業内学卒研修生ルートとして知られているルートに若干の改正が行われた。 新規則の手続きは、現在のICTビザプロセスとほぼ同じである。

この新ルートと現在のTier2 ICT(企業内異動)ルートの主な違いは、提供されるビザの期間である。 申請者が「高収入」である場合、つまり給与が73,900ポンドを超えている場合、10年間のうちICTルートでの累積許可期間を最大9年間取得できる。申請者が高収入でない場合は、6年間のうち5年までICTルートにとどまることが出来る。 この条件を除いては、クーリングオフ期間の適用は、今後は廃止される。

さらに、ICTビザ保有者は英国内で一度だけSkilled Workerに切り替えることが可能になる。ICTルートは現行では永住権につながらないため、これにより申請者は永久に英国に滞在できるビザを申請することが可能になることは朗報である。

英国政府は、不必要に制限されたスポンサーシップに基づくビザを持つ移民に対する多くの小面倒で無意味な規則を撤廃しているところである。 それによりシステムはより単純化され、スポンサー可能な仕事の幅が広がり、仕事を得やすくなることは確実である。

ただし、新ポイントベースの移民システムは、EUの域内移動の自由の代替としては、見劣りがし、かつ費用がかかるものである。 雇用主と労働者は、スポンサーシップの法外な費用を負担し、採用者が仕事を始める前に長いビザのプロセスを完了する必要がある新しいシステムに慣れる必要がある。 この改定が英国経済と労働市場にどのような影響を与えるかは、政府が述べているように不確実である。 私たちは、今、未知の世界に大きなジャンプをしようとしている。


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