Feb 2021 -言葉のアクセントについての差別、「コードスイッチング」および平等法

最近のフランスの法律は、地域の言葉のアクセントのある人に対する差別を禁止している。この記事では、言葉のアクセントについての差別についての英国の法的立場を考察し、「コードスイッチング」に関連する問題とその潜在的な悪影響について考察する。

新しいフランスの法律は、人種差別、性差別、障害などとともに、差別理由のリストにglotophobie (フランス語で言葉のアクセントについての差別を意味する)を追加する。 この法律違反に対する最大の罰則は、3年の懲役と45,000ユーロの罰金である。

法案は、98票対3票で承認される前に、国民議会で熱く議論された。 賛成したのは、アルジェリア訛りの為に「嘲笑」されたことに言及した北アフリカ人の娘Patricia Mirallesさん、また、フランス本土以外の訛りを出すことの難しさを語ったフランス領ポリネシアの副官Maina Sage氏だった。 Éric Dupond-Moretti法務大臣は、この法の必要性について「非常に納得している」とコメントした。


英国における言葉のアクセントについての差別の状況はどうか?

2010年の平等法にはこの分野におけるいいくつかの保護が含まれている。 人種は、国籍、民族、出身国を含む保護された特性であるため、外国人の訛り(たとえば、フランス、オーストラリア、または日本語のアクセント)を理由に人を差別することは違法な可能性がある。 この保護は、英国の様々な地域のアクセントを持つ人々に適用されるため、ウェールズ語、スコットランド語、または北アイルランド語のアクセントがあるために誰かを差別することは違法になる。

しかし、法律はこれ以上拡大解釈されるだろうか? たとえば、リバプールアクセントのために就職の機会を逃した場合、そのリバプール出身者は差別を主張できるだろうか? 国籍や出身国の問題が発生しないため、答えは恐らくそうではないだろう。リバプール独特のアクセントは、あくまでも英語のアクセントであり、雇用主がすべての英語のアクセントを差別しない限り、直接差別の主張は出来ない可能性が高い。


英国では、アクセントの識別はどの程度問題になっているか

この問題に関する研究はあまりないが、昨年発行された英国のアクセントバイアスに関するロンドンのクイーンメアリー大学のレポートによると、従業員のキャリアの各段階に影響を与える可能性のあることが分かった。

研究者たちは、様々なアクセントを使用して採用選好の研究を実施し、古典的な容認発音(伝統的にイギリス英語の「標準」と見なされているアクセント)で話す人々は、都市部の労働者階級や少数民族のアクセントを持つ人々よりも敬意を表されている可能性が高いことを発見した。 事実上、この研究により、過去50年間にこの点に関しては何も変わっていないと結論付けた。

この研究では、アクセントの固定概念は、個々人の職務遂行能力がどのように回りに認識されるかに影響を与えることも分かった。 繰り返しになるが(それ程極端ではないが)、英語の「標準」アクセントで話す人が最も有能であると見なされたことになった。

アクセント差別は、社会階級に基づく差別と密接に関連している。 労働組合会議はしばらくの間、社会経済的地位が保護されるべき特性になることを推進してきた。この方針は、労働党の2019年総選挙マニフェストでも取り上げられた。

これらの問題は、職場での平等に関する将来の政策を懸念する政治的議論において顕著であり続ける可能性が高い。 女性平等大臣のLiz Truss氏は最近、アクセント差別と社会的流動性を改善する必要性の両方を明確に言及した演説を行った。

違法ではないものの、リバプール、バーミンガム、ヨークシャー、またはその他の地域の訛りのために就職採用しないのは、他の種類の差別と同様に不公平で非論理的である。 候補者の能力や可能性とは関係のない何かのために、貴重な才能を逃しかねない。


コードスイッチングとは何か?

「コードスイッチング」という用語は、当初は他言語間で話す言語を変える多言語話者を指すために使用されていたが、時間の経過とともに発展し新しい意味を持つようになってきた。 2019年のハーバードビジネスレビューによると、「コードスイッチング」は、公正な待遇、質の高いサービス、または雇用機会得る代わりに、他者の快適さを向上させる目的で話し方・外観・行動・表現のスタイルを変更する慣行を説明するために使用される用語になった。

我々は皆、ある程度専門的または社会的状況に応じてこの慣行に関わっている。 ただし、コードスイッチングは主に一部の少数派グループによって使用され、職場で発生すると悪影響を与える可能性がある。

これは、特に少数民族グループにとって、複雑で微妙な意味合いを持つトピックである。 コードスイッチングは「サバイバルテクニック」として説明されており、マイノリティグループが優勢な白人文化を切り抜けられるようにする。 個々人はまた、社会階級のためにコードスイッチすることもある。 たとえば、地域のアクセントが強い従業員は、「クイーンズイングリッシュ」で話すことで偏見を避け、ビジネス上での敬意と特権を高めることができると考えているため、話し方を変える傾向がある。

コードスイッチングは、個々人に利益をもたらすと考える人もいるかもしれないが、それが常に前向きなことになるとは限らない。 研究によると、コードスイッチを行う黒人は、より「プロフェッショナル」であると認識されているが、そのような行動は「本当の自分」でいることが出来ないと感じる人には精神的な打撃を与える。

その代償として、優勢な文化に合うように振る舞い、話し、行動する方法を変える必要がある。この絶え間ない調整の必要性は、仕事のパフォーマンス、同僚との関係、雇用のレベルに悪影響を及ぼす。

従って、コードスイッチングは、組織の雇用に悪影響を与える可能性もある。コードスイッチングによって引き起こされる燃え尽き症候群に苦しんでいる従業員は組織に留まる可能性が低く、その結果、従業員の離職率が高くなる。 会社に残った場合でも、彼らは一般的に意欲を失いモチベーションも低くなり、高い水準で業績を上げることが出来ないと感じがちである。


雇用主は、職場でのコードスイッチングの悪影響をどのように打ち消すことができるか?

ここでの問題は複雑だが、個々人が職場で「自分らしく」いられることを奨励するために、雇用主が講じることが出来る対策がある。雇用主が出来る最も重要なことの1つは、次のような手順を考慮して、職場の環境と文化を評価することである。

  • ビジネスのすべてのレベルにおいて少数派の問題に取り組むために、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用および昇進させる。様々な民族グループや社会経済的背景を持つ人々が組織のすべてのレベルに配置され可視化されるようにすることは、個人それぞれの違い自体はそれほど目立たないことを意味する。
  • マイノリティの民族グループが真の意味で許容され、目に見えるように感じられる文化を育む。 少数派の問題に取り組むことができたとしても、組織内で受け入れられていると人々が感じることが重要である。
  • 「文化的適合性」について、従業員に送信しているメッセージを振り返る。 彼らが自分らしさをもって仕事をすることを奨励するためにどのような変更が必要になるかを考える。そうすることで彼らが罰せられることないということを周知徹底させる。
  • 社員全員、特にマネジャーや面接パネルに座って採用や昇進のプロセスに関与している人にダイバーシティトレーニングを提供する。
  • スタッフ全員のために無意識のバイアストレーニングを実施する。 我々自身の偏見は、コードスイッチングの振る舞いを不注意に助長しそれに寄与することがよくある。

もし特定のケースにおいて、具体的なアドバイスが必要な場合はLewis Silkin LLP 法律事務所のAbi.Frederick@lewissilkin.comまたは koichiro.nakada@lewissilkin.com まで、ご連絡をお願い致します。