Apr 2015 – 障害者の雇用と適切な労働条件の調整

最近のDonelian v Libertata (Donelian)のケース,を検証すると雇用上訴審判所は、雇用者が適切なステップを取ったことを認め、被雇用者が障害を持っていたかどうかを確証するために考えられる全てのステップを取ったとはいえないが、その障害の全容を知る責任から免除されるだけの十分なことはしたと判断した。

Ms Donelianは11年間Liberataという会社で勤務したが、2009年に頻繁に起きる短期の欠勤に関連して社内規則で示されている欠勤の報告を怠ったことにより解雇された。その後Ms Donelianは、雇用審判所に、解雇は雇用者が適切な雇用条件の調整をする義務を怠った為であるとして不服の申し立てをした。

このケースは、雇用者に頻繁に起きる短期の欠勤をする一筋縄ではいかない被雇用の取り扱いに関して、ある種の安心感を与えるものである。それは、雇用者が考えられる全てのステップを取り被雇用者の障害が何であるかを知ることを必ずしも求めていないと判断したからである。それは被雇用者がするべきことで、それが根本であるとしている。しかしながら、このケースでは、一つ一つのケースはその事実関係で左右されるので、これを一般的なルールとはできないとも判断した。

2010年に導入された平等法によれば、雇用者は障害を持つ被雇用者に対して適切な対応をとることが義務付けられている。ここでいう障害とは、身体だけでなく精神的な障害を含み、このことが通常の業務に遂行するための悪影響を及ぼし、このことが看過できないものであり、長期的なものであるとしている。上訴審判所におけるGallop v Newport Cityのケースは、雇用者は被雇用者に障害があるか否かの判断は、彼らの労働衛生サービス機関の視点に全面的頼ることなく自らの結論を出すべきであると判断している。

適切な対応をとる責務は、雇用者が被雇用者の障害について知っているか、又は被雇用者の障害について積極的な知識を持つかによる。例えば、雇用者は障害について通常の状態で知ることを予測されていたかどうか、雇用者はその障害を知らなかったとしたら適切な対応をとる責務を持たない。そして、通常積極的に知ることを期待されていない。

雇用上訴裁判所によれば、雇用者は、以下の4つの条件を満たす限り適切な対策を取る責任から免除されるとする。

● 雇用者が障害のある人が実際に障害を持つことを知らない場合
● 雇用者が健常者と障害のある人との能力を比較したときに障害者が重大な不利を持っていることを知らない場合
● 雇用者は通常の状態において障害者が障害を持っていることを知ることを期待されていない。
● 雇用者は通常の状態において障害者が健常者と比べて重大な不利を蒙るという状況におかれ易いことを知ることことを期待されていない。

このケースは、雇用者は被雇用者が繰り返し欠勤する、それらのうちのいくつかは今は障害とは言えないがいずれ障害に結びつく複数以上の健康上の問題について難しい状況に直面していることを意味している。このケースで特に複雑な様相を示すいくつかの事象は、Ms Donelienの健康状態が安定しておらず、継続的でないこと、又はそれから来る影響がまちまちであることである。そして、彼女が出来ないこと、彼女がしたくないことの2つの違いを明らかにすることの難しさにある。このような状況は雇用主にとって非常に判断が難しい状況であるが、欠勤の真の理由は障害の顕在化が様々な顔を見せてあらわしてくるのかもしれないことを常に念頭に置くべきである。このことは特に仕事に関連したストレスに原因がある場合に言える。さらに、今回のケースのように被雇用者は短期間の時間の流れの中で障害と見なされない状況から障害のある状況に変化する場合があるということを理解しておく必要がある。

雇用上訴審判所は、雇用審判所の懸念する労働衛生アドバイザーが被雇用者に面談をせずに結論を出したということには触れなかった。もし、これが問題だとすると、このことは新しく導入された雇用条件の適合性に関するサービス(Fit For Work Service)の制度に内包する問題となる。なぜならば、労働衛生アドバイザーは通常は対面面談をせずにリポートを作成するからである。

この記事に関するご質問は、フィリップ・ロス法律事務所の弁護士中田浩一郎、(Koichiro.nakada@philipross.com)、または中田陽子(yoko.nakada@philipross.com)までご連絡をお願いいたします。