Feb 2019 – Uber BV他 対 Aslam他(控訴院判決 2018年12月)

2018年12月控訴院は、ウーバーに雇用されているドライバーは、ウーバーアプリにサインインし業務が出来る状態になった時はいつでも個人事業主というよりはむしろ『労働者』であるとみなされるという雇用控訴審判所の判決を多数で支持した。ウーバーはこの控訴院の判決に対して最高裁判所に控訴することができる許可を与えられた。

この裁判は、基本的に2つのウーバー事業者-、ウーバー事業運営に必要とされているプライベート・レンタル車両のライセンスを保持するウーバーロンドン社と、ウーバーアプリの法的権利を保持する親会社のオランダ企業ウーバーBVを巻き込んだものであった。
ウーバー利用客はスマートフォンアプリを使って車を呼び、ウーバーが最寄のドライバーを確認した上で、そのドライバーに予約情報を伝える。予約が成立した段階で、ドライバーと利用客はアプリを使って連絡を取ることが出来る。目的地に着いた段階で、ドライバーのスマートフォンのGPSデータによってウーバーが運賃を計算する。

ウーバーの作成した利用規約にはドライバーと利用客の関係は、ウーバーは運送サービスを提供したのではなく、運送に携わる業者(第三者)の代理の役割を果たしたとする記載がある。それ故にドライバーは『個人事業主』として区分されているとした。然しながら、ウーバードライバーはむしろ『労働者』であると基本的権利を主張した。

主たる問題は、ドライバーが『労働者』であるかどうかであり、控訴院は契約書は形式的なものであり、それは実際の業務の中で起こったこととはかけ離れていたというところがポイントで、従って『個人事業者』とすることは当らないとした。
この裁判は、ギグエコノミー(インターネット上で仲介され、単発や短期で仕事を受注する新しい働き方に)関して様々な影響を与えるとして大いに注目を浴びるものであった。この判決は、Addison Lee、Pimlico Plumbers、Deliverooなどの、多くのギグエコノミー労働者のステータスを決定付けるであろう。この決定は、長年続いてきた歴史的な雇用ステータスに関連するケース、『標準的』なフルタイムの仕事から急激に柔軟な働き方へと変化をしている現代的な労働社会の前例となろう。

最高裁判所の判決によっては、ギグエコノミー労働者は雇用関係の中で、法定最低賃金や有給休暇などの基本的権利を受けることが出来る可能性があると言える。最高裁判所が判決を支持すれば、ウーバーおよび多くのギグエコノミー企業に対し全従業員からの申立てが殺到する可能性が高い。

雇用審判所と雇用控訴審判所の両審判所とも、ドライバーは「労働者」だと結論付けた。これは、ウーバーがドライバーに対して強い管理力を行使していることを考慮に入れた上での結論である。
たとえば、顧客の評価が低くなった場合、ドライバーのアプリへのアクセスが無効になり、ドライバーはウーバーの業務が出来なくなるという制裁を受ける可能性があった。またウーバーは、ドライバーに対し利用客を乗車させたくない場合はアプリからログアウトするべきだと指示した。
それにもかかわらず、雇用控訴審判所はいつドライバーがウーバーの『労働者』として扱うべきなのかという部分が難点のあることを明らかにした。それは、ドライバーが利用客を乗せて目的地に向かっている間は問題ないが、乗客を乗せていない時間はどうか?という点である。この問題は、ドライバーの『労働時間』と法定最低賃金に対する権利を判断することに関わるため重要である。

控訴審において控訴院は、アプリのスイッチを入れている時は常にドライバーは労働者であると結論付けた。これは高い頻度で予約を受けることが要件であること、この要件に従わないドライバーは強制ログオフとなること、および評価システムがパフォーマンス・懲戒のプロセスとして機能する方法は、全てウーバーがドライバーを著しく管理していることを明確にした。 最高裁判所が同様の見解を持つかどうかは興味深い点である。

テイラー報告(現代の雇用慣行に対する改革勧告についてのマシュー・テイラーによるレビュー)の1年半後、政府は遂に雇用ステータス・テストの明確性を改善することが見込める “グッド・ワーク・プラン” において労働者ステータスの勧告に応じた。

これに関してはこれ以上の情報はまだ無いが、雇用者と労働者の両方に解決策を提供するためにどのような枠組が組まれるか、状況を見守っている。

この記事に関するご質問などがございましたら、弁護士 中田浩一郎koichiro.nakada@lewissilkin.com または中田陽子yoko.nakada@lewissilkin.comまでお気軽にご連絡下さい。