Oct 2017 – 変なことをしているとカメラが見てますよ!

この記事を読まれる多くの方は、英国のテレビ番組 “the Apprentice”(見習い)を見ているかも知れない。このテレビのショーは、アランシュガー卿が14名の熱心な候補者から彼のビジネスエンパイアーで働く新しい見習いを発掘するという設定である。

ところが、この新しいシリーズのエピソード1が視聴者に思いもよらない騒ぎを引き起こした。この番組の背景の中にはある人の夫と赤ちゃん、そして一人の女性が一緒に映っていた。放送直後、これを見たその男性の妻の友人は、その場面の映像をその妻に送って“テレビに映っているのを見たよ”と伝えた。しかし、妻は“うーん、彼女は長い黒髪けど、私じゃないよ”ということで、その映像を見て怒った妻からの記事がネットに流れた。

直接関係はないことではあるが、これはカメラの監視の目がどこにもあるという事を思い知らされる出来事である。

多くの会社から、社員が体調不良にて病欠を取ったときに、それが嘘であった事が分かったときの対応についてアドバイスを求められることも多い。
雇用者が、このような証拠があるケースを多く扱ったことがある。例えば、ウィンブルドン観戦のケース!(または、証拠はないがマネージャーは従業員が病欠という正当な理由でなく欠勤したことがわかっているため、そのような社員を現行犯で捕まえることを望んでいる場合)

現代社会は、日々の生活で誰かの写真の背景に入らないということはなくなってきている。
誰かのセルフィ写真、旅行者の後ろを歩いていて写真に写ってしまったり、またはCCTVの映像の中であるとか(例えば職場を出入りするとき)。この現代の状況は、前の世代の人達が夢のようであると思ったような便利さを私たちの生活に沢山もたらしてくれたが、その反面ツケを払う羽目にもなっている。それはプライバシーの侵害である。私たちはどこで監視されているか、またどの記録が私たちの記録なのか、CCTVで撮影された行動記録は“個人情報” であることを全く分かっていない。このことを多くの人は、認識していないだろう。

来年の5月から「一般データ保護規則」が施行される。これはEU市民に、今までに増して個人情報の自主コントロール権を与えるものである。このことから、企業は個人情報の取り扱い、その使い方に十分な注意を払うことが必要である。
雇用契約書に従業員の同意事項の記載があるからと言って、これに頼ってはならない。そして個人情報を使うことは、ビジネス上でどうしても必要とされる場合のほかは制限を加えられることになる。

(このことはもちろん、先のTV上に現れた個人情報の問題については解決はしないが!)

さて、夫がTV上で見つけられたことに話を戻してみたい。結局のところ、一緒に居た女性は共通の友人であった(少なくとも彼らの話によれば)ということで、この事件は英国中を揺るがす恥ずかしい話ではなく、ただの面白い事件として事を終えた。それでも、考えさせられる出来事ではあった!

この記事に関することや雇用法に関するご質問などがございましたら、弁護士 中田浩一郎koichiro.nakada@lewissilkin.com または中田陽子yoko.nakada@lewissilkin.comまでお気軽にご連絡下さい。