Sep 2019 – 職場でのダイバーシティ:差別と嫌がらせ

メンタルヘルスケアサービスを手掛けるPriory Groupの従業員の1人は人種的な嫌がらせ、恐怖、または苦痛を与えたとして有罪判決を受けていたが、5月30日のカーディフ刑事裁判所での控訴審でその判決が破棄された。この事件は昨年12月のクリスマスパーティーで起き、顔を黒と白に塗ったミンストレル(中世の歌手/ミュージシャン)に扮したこの事件の該当者が、ヘッドシェフLoretta Doyleyさんに向けて「レイシスト(人種差別主義者)」の歌とダンスを披露したことに対して、後に彼女はラインマネジャーと人事にこのことを報告したことが背景にあった。

裁判所は、Davies氏の行動は「異様であり悪趣味ではある」としたが、彼の行動が脅迫的または虐待的であったとは言えない。 そして彼の意図は「楽しませることであり、気を悪くさせるつもりはなかった」と結論付けた。

このケースでの最重要ポイントは、従業員が職場で物事の一線を越えるという境界線がどこにあるか知ること、そして何が人を傷つけ攻撃的とみなされるかを理解することがいかに難しいかということである。例えこのケースが有罪判決ではなかったといえ、従業員間の健全な関係を維持し訴訟を防ぐために、どこに越えてはならない一線があるかこの境界線を明確に示すことが欠かせない重要事項であると言える。大きな視点で確実に差別を防ぐためには、従業員が快適な職場環境であると感じることを実現することにある。

従業員を教育し、従業員がダイバーシティを認識し、受け入れ、評価できるようにすることは全ての企業が努力すべきことである。英国の従業員の10人のうち僅か4人の割合の従業員しか彼らのリーダーがダイバーシティ&インクルージョン(「D&I」)の目標を設定しそれを知らしめているに過ぎないと考えており、組織が多様な才能のある人材を効果的に配置していると考える従業員は更に少ない。

D&Iのもう1つの重要な側面は、職場のダイバーシティとは、公正で平等な機会を与えることだけではないということである。調査によると、ダイバーシティが生産性と経済的利益の増加につながる可能性があることを示している。 ダイバーシティは、やる気、様々な文化的思考プロセス、多様なスキルを高めることができるため、組織にとってどれだけ役立つかは明らかである。

多くのD&Iイニシアチブの主な失敗は、自分自身に多様性を感じていないかもしれない従業員とのこの課題に対する共有意識がないことがあげられる。 例えば、少数派グループ内の労働者のみに焦点を当てると、かなりの割合の労働者が組織の努力に気付かない結果になってしまう。

上記で説明したことを基に可能な対策として、イベントやアクティビティを通じて意識を高めること、関係するスタッフがトレーニングを受けていることを確認すること、チームで働く従業員に取り組む意欲を浸透させることなどが挙げられる。

Lewis Silkin LLPは、Worksphereサービスを通じて人事のためのダイバーシティトレーニングコースなど、多数の関連コースを提供しています。
より詳しい情報をご希望の方はLewis Silkin LLP弁護士 中田陽子(yoko.nakada@lewissilkin.com)までご連絡下さい。

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