第3回:いよいよ念願のリハビリ病院への転院

飯塚: 前回はリハビリのための転院が、 ノロ・ウィルス院内感染で、1カ月も延び 延びになったとお聞きしたところでした。 新たな転院先ではどのような日課が組ま れていましたか。

原田さん: リハビリ病院では、作業療法士(OT)、理学療 法士(PT)、言語療法士(SLT)がチームを組み、週の初 めに1週間の時間割が渡されます。医師やカウンセラーの 予定も書き込まれます。家族に頼んで、いつも翌日のスケ ジュールを書き出してもらっていました。リハビリは1日大体3セッション程でしたが、もっともっとセッションを増や してほしいくらいでした。

飯塚: 意欲的に取り組まれる気持ちが伝わってきます!

原田さん: しかしここは英国、セラピストが時間通りに来 ないこともたびたびあり、よくワイフにセラピストを呼びに 行ってもらいました。「ユタカはやる気に満ちている」と色々 なところで言われましたが、とにかくもっと良くなりたいと いう気持ちが強かったです。

飯塚: 最終的にご本人が良くなりたい、回復しようという 「気」が、リハビリの成果に影響を及ぼすのだと思いますか ら、主体的な取り組みを強く希望された原田さんの姿勢に、 病院のスタッフたちも感嘆したのでしょうね。ところで、 病院での楽しみは食事時間ではないかと、私の個人的な経 験からも思い出されるのですが。

原田さん: 入院中は嚥下障害と診断されたため、食に関 してはかなり忍耐を強いられました。私は元々おいしいものを食べるのが大好きでしたので……。それでも、どうし てもおいしい寿司が食べたいという願いがかなって、行きつけの寿司屋のシェフが握って届けてくれたのには感激しました! 退院時には、食事制限の指導を受けましたが、ワイフが私のおいしいものを食べたいと言う気持ちを汲み取り、色々チャレンジしてくれたおかげで、今ではほぼ普通 の食事をしています。病院での食事は基本的に食堂で食べ るので、ほかの病室の方たちとも自然と顔なじみになります。患者も家族もお互い声をかけて励ましあったり、快復 を喜びあったり、和気藹あいあい 々とした雰囲気でした。

飯塚: おいしいものを食べることは元気になることにダイレクトにつながりますから、寿司なども食べられて本当に良かったですね。何か英国の病院に発見はありましたか。

原田さん: 病院はとても明るく開放的で、病室からすぐ庭 へ出られます。季節も良かったので、毎日の様に日光浴をしていました。沢山の方にお見舞いにいらして頂き、それも本当に励みになりました。入院中に1度、ベッドから落ちたことがあり、びっくりしました。同室の患者さんが大慌てでナースを呼んでくれたのですが、それを話すと「自分は3回落ちたことがある」と言った強者がいました。

飯塚: 驚きですね!

原田さん: リハビリ病院では、希望すれば週末に自宅へ帰ることができる人もおります。私の場合は、当時まだナー スの介助が必要だったのでかないませんでしたが、理学療 法士の許可をもらって、病院の近くにある大学キャンパスやパブに散歩に行ったりしました。また、退院後に行動範 囲を広げていきたいと作業療法士に伝えたところ、バスを使って近くの街まで行くというセッションを用意してくれました。柔軟な対応だと思います。

飯塚: 今日もありがとうございました。次回は退院後の生活を中心にお聞きしたく思います。

ご友人からのお見舞いの短歌
復活の 日の近きこと実感す よく飲み食ぶる 君を見るとき (歌人 渡辺幸一さん)

※ 原田さんは回復途中で言葉を話すことがまだ自由ではありませんので、 対談中は美弥子さん、智美さんにお手伝いいただいています。

6月16日、ロンドンのレストラン「タカハシ」で。左から美弥子さん(奥様)、 智美さん(お嬢さん)、原田さん、渡辺 さん(歌人)、飯塚(筆者)

本コラムの過去記事は、下記アドレスでご参照いただけます www.centrepeople.com/japanese/article