Oct 2020 – ガイダンスから法律へ − フェイスカバーの着用を拒否したらどうなる?

フェイスカバーについては以前はガイダンスに過ぎなかったものの、2020年9月24日より今や法律となり、マスクを着用しなければならない特定の仕事や屋内環境に関する新しい規則が制定された。 罰金も厳しくなり、最初の違反で200ポンドに増額され(14日以内に支払われた場合は100ポンドに減額)、再度違反した場合は最大6,400ポンドになる。

フェイスカバーについて、規則の変更により雇用主の責任について疑問点が生じている。 雇用主は従業員や訪問者に対してどのような健康と安全の義務を負っているのだろうか?


フェイスカバーにおけるルールとは?

この状況下における「フェイスカバー」とは、再利用可能または使い捨てのフェイスマスク、スカーフ、バンダナ、宗教的な衣服、手作りの布製カバーなど、鼻と口を安全に覆うもの全てを指す。

フェイスカバーに関する規則には、法的な要件と政府のガイダンスの両方が組み込まれている。 それらはCovid-19パンデミックの開始以来数回変更されており、英国内の地域によって異なるが、現在は次のものが含まれている。

  • 小売店、スーパーマーケット、ショッピングセンター
    英国全域で顧客のフェイスカバー着用が義務づけられている。
  • 公共交通機関
    イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの旅行者に、フェイスカバーの着用が義務付けられている。
    運輸労働者は、ソーシャルディスタンスを保つことが困難な状況では着用することを推進されているが、作業中のマスクの着用は法律では義務付けられていない。
  • 航空機
    イングランド、スコットランド、ウェールズで航空機に搭乗する乗客はフェイスカバーが必須だが、北アイルランドではその使用が推奨されているのみである。
  • 屋内スペース
    フェイスカバーは、英国内のほとんどの屋内環境で一般の人々に義務付けられている。 政府の一般的なガイダンスによると、フェイスカバーは、普段会うことのない人と接触する屋内施設や、ソーシャルディスタンスを保つことが難しい場所で着用する必要がある。

誰がフェイスカバーの着用を免除されているか?

政府のガイダンスでは、フェイスカバーを着用する必要がない人々の例示列挙リストを提供している。 これには、例えば、身体的もしくは精神的な病気を持つ人々、または障害のためにフェイスカバーの着用・取り外しが困難な人々、および11歳未満の子供(北アイルランドでは13歳、スコットランドでは5歳)が含まれる。


従業員は業務時にフェイスカバーを着用すべきか?

雇用主には、安全な職場復帰計画を立てる際に考慮すべき多くの健康と安全に関する事項がある。これには、従業員に提供する必要のある個人用防護具(PPE)またはフェイスカバーが含まれる。

安全な労働環境を提供するために、雇用主には既存の法的義務がある。 その義務を遵守するために、雇用主は、自社の職場のタイプに応じて、「政府のコロナウイルスにおける職場ガイダンス」の該当箇所に従う必要がある。

一般的に、政府は、ソーシャルディスタンス、高水準の手指衛生、表面洗浄の強化、およびチームの固定化が職場でのリスクを管理するための最良の方法として、そしてフェイスマスクを着用するよりも重要な手段として奨励している。

ただし、一般の人々と接触する可能性のある小売、レジャー、ホスピタリティの現場スタッフは、フェイスマスクを着用する必要がある。 これには、小売店、レストラン、カフェだけでなく、銀行や不動産業者などの一般向けビジネスも含まれる。 パースペックススクリーンのような労働者と一般の人々の間に物理的なバリアがある場合、バリアの向こう側にいるスタッフはフェイスカバーを着用する必要はない。

他の業種でも、雇用主は従業員がフェイスカバー着用を選択した場合にはそれをサポートする必要がある。 雇用主はまた、ソーシャルディスタンスを保つのが難しい屋内施設ではフェイスカバーを着用する必要があるという政府の一般的なガイダンス(上記)を念頭に置く必要がある。

ウェールズでは、ソーシャルディスタンスを保つのが難しい屋内労働環境におけるフェイスカバーの使用が、規則上明示的に義務付けられている。


従業員がフェイスカバーの着用を尋ねられた後、拒否した場合はどうなるか?

雇用主がリスク評価の一環としてフェイスマスク着用が必要であると判断した場合、またはフェイスマスク着用が義務付けられている業種では、雇用主はマスクおよび/またはPPRを提供し、従業員がそれらを適切に使用していることを確認するための措置を講じる必要がある。

従業員が健康と安全の規則を軽視し注意を怠ったために誰かの健康が損なわれた場合、雇用主はその責任を負う可能性がある。 (ただし、実際には、従業員がフェイスカバーを着用しなかったためCovid-19に感染したことを示すことは困難であると思われる。)

雇用主は、フェイスマスクやPPEを着用することになっているにも関わらず同僚が着用していない、という懸念を従業員が相談できるようにするための特別なプロセスを設定することを検討する必要がある。 状況によっては、、雇用主は、調査後に、懲戒処分を前向きに検討する場合があるかもしれない。

ただし、雇用主は、従業員にフェイスカバーの着用を義務付ける包括的ポリシーの導入と実施に注意する必要がある。これは、フェイスカバーを着用しない正当な理由がある人々を不法に差別するリスクを冒す可能性があるためである。

たとえば、喘息に苦しんでいる従業員が十分な呼吸が出来なくなるとしてフェイスカバーを着用していない場合、その従業員を懲戒にすることは間接的な障害者差別にあたる可能性がある。 雇用主は、障害のある労働者に対して「合理的な調整」を行う必要がある。これには、正当な理由のある従業員がフェイスカバーを着用しないことを許可することも含まれる。


訪問者や顧客がフェイスカバーの着用を拒否した場合はどうなるか?

政府のガイダンスの下で、フェイスカバーが必要な施設は「法律の遵守を促すために合理的な措置を講じる」必要がある。 とはいえ、コンプライアンスを強要する責任があるのは警察と公共交通機関の職員だけである。

従業員と同様に、訪問者や顧客にもフェイスカバーを着用しない正当な理由がある可能性がある。(年齢、健康面、障害など) そして政府のガイダンスは、こういった人々に対しては書面による証拠の提示を日常的に求めるべきではないとしている。

このことは、訪問者がフェイスカバーの着用の要求に従わない場合に、従業員へのリスクを管理するために雇用主が実際に何をすべきかについて難題を提起している。そういった状況下で、従業員に追加の防護を提供する方法があるかどうか、また、スタッフを保護する義務の一部として、顧客にコンプライアンスの強要を求めるか、またどのように求めるかを検討したいと考えるであろう。


Lewis Silkin LLP 法律事務所 では現在、雇用法とCOVID19法律の領域で、頻繁に寄せられている質問への回答に務めています。もし、特定のケースにおいて、具体的な法的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所のAbi.Frederick@lewissilkin.comまたは koichiro.nakada@lewissilkin.com まで、ご連絡をお願い致します。