Feb 2022 – 今年は全員が休暇を1日多く取得できるのか?


6月4日にエリザベス女王の在位70周年を祝うプラチナジュビリーの追加のバンクホリデー(祝日)が発表されて以来、従業員はこのおまけの大型連休をどのように過ごすか計画を立て始めている。しかし法的な立場はそれほど単純ではなく、なかには休日が全く増えないという従業員がいる可能性がある。

今年は、通常の5月下旬のバンクホリデーが6月3日(木)に移動され、さらに追加で1日、6月4日(金)にバンクホリデーが設定された。

しかし、前文化庁長官の「ジュビリーの特別な4連休を国民皆が楽しみの一つにできる」というコメントはあるものの、従業員が実際に追加のバンクホリデーの恩恵を受ける権利があるかどうかは、雇用条件の文言や勤務形態のタイミングに左右されることになる。


誰が追加休日を取得可能か?

法律的には、雇用契約書に「X日間の年次有給休暇とバンクホリデーを取得する権利がある」と記載されている場合にのみ、従業員は追加のバンクホリデーを取得することが可能である。

雇用契約書に、バンクホリデーを含むX日間の年次有給休暇、またはX日間の年次有給休暇と通常の8日間のバンクホリデー(イングランドとウェールズの場合)と記載されている場合は、今年追加のバンクホリデーを与えるかどうかは雇用主の裁量に委ねられることになる。


パートタイムの従業員の場合

パートタイムの従業員の場合も同様で、追加の休日(または代替日)を与えられるかどうかは契約書の文言による。その日に通常勤務している従業員だけに追加の休日が与えられるとなると、 バンクホリデーが勤務日でないという理由でその日に通常勤務していないパートタイム従業員にとっては、その恩恵を受けられなくなる。 パートタイムの従業員が不利な扱いを受けているというクレームを避けるために、該当従業員の休日を比例配分で調整する必要がある。


教師と父兄の場合

イングランドの学校に勤務する教師やその他の職員が、2021/22年度中に1日余分に休日を得ることが「学校教師の給与と条件に関する文書」(同様の規定が英国全土に適用)で通達された。したがって、学校は全てのスタッフ(学期間限定契約およびパートタイムのスタッフを含む)が、学期間限定契約およびパートタイムのいずれに該当するかに関わらず、追加のバンクホリデーの恩恵を受けることを保証する必要がある。

ジュビリーバンクホリデーは、ほとんどの学校にとってハーフターム(学期の中休み)にあたるため、そのような学校は、全てのスタッフが追加休暇の恩恵を受けられるように、別の日を休校日に選ぶ必要がある。

これは教師にとっては良いニュースだが、父兄にとってはどうだろうか。 ほとんどの学校は、ハーフターム以外の日に代休を設定せざるを得なく、その場合、働く父兄は余分に休みを取るか、チャイルドケアのカバーを見つける必要性が出てくる。もし、そういった父兄が、追加の休日を与えられず、チャイルドケアのために別の休日を使わなければならない場合、特に不利に感じるかもしれない。


給与はどうか?

シフト勤務の従業員など一部の従業員は、必ずしも追加の休日を得ることは期待しないであろうが、「バンクホリデー」としての割増賃金の支払を期待する場合がある。この場合も、雇用主がこれを支払わなければならないかどうかは従業員の雇用契約内容の詳細による。 契約書にバンクホリデーに対する割増賃金が規定されている場合は、割増賃金に今回のバンクホリデーも含まれることになる。


雇用主にできることは?

このシナリオでは、従業員との関係を考慮に入れることが重要である。不当な扱いを受けていると感じて不満を持つ従業員がいると、風評被害が発生するリスクがある。

通常、バンクホリデーが休暇である(あるいはバンクホリデーの割増賃金を支払っている)従業員の場合は、2022年6月4日にも同じことが適用されると期待する可能性が高い。 たとえ契約上法的な権利がないとしても、追加の休日を付与しないことは悪い印象を与えかねない。

2011年4月29日、ウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんのロイヤルウェディングを祝うための臨時バンクホリデーに企業がどのような立場を取ったかを検討する価値はあるだろう。永年勤続者は雇用主の方針を覚えていて、今回も同じ方針であることを期待する可能性が高い。

北アイルランドでは、この件に関する対応は上記と同様であるが、通常バンクホリデーは10日間に設定されており、産業分野や地域によって様々な慣行が適用されている。北アイルランドに拠点を置く雇用主は、ジュビリーバンクホリデーを与えるか否かに関連して、潜在的な宗教的または政治的意見における差別問題についてアドバイスを求めることが賢明であろう。

多くの企業が、厳密な法律上の位置づけに関わらず、特に広い意味での状況を考慮して従業員に追加の休暇付与を決定すると予想される。 現在、雇用市場は非常に活気があり、「大量の辞職」が予想されると言われている。 良い人材を確保しようとする雇用主は、従業員が公平な待遇と報酬を受けていると感じられるようにすることに重点を置いている。マスコミで「みんな」のための大型連休と報道されている追加の休暇を認めないことは、こういった人材確保をするためのポリシーにそぐわないと考えられる。


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