Sep 2020 – Covid-19終息後のフレキシブル勤務-目覚ましい変化があるか?それとも何も変わらないか?

コロナウイルスのパンデミックとそれに伴うロックダウンにより、初めて数百万人が在宅勤務を余儀なくされた。この在宅勤務の経験により、ほとんどの従業員が職場に戻るように求められた時に、フレキシブルな勤務形態を求める声が急増する可能性がある。 この記事では、フレキシブル勤務のリクエストに対処するための雇用主の法的立場と実用性について検討する。


法的なポジション

勤続の期間が26週間以上経過した従業員は、フレキシブルな勤務のリクエストをすることができる。雇用主は3か月以内に「合理的な方法」で対応する必要がある。 雇用主は、コスト、仕事を再編成できないこと、顧客の要望の問題など、8つの「ビジネス上の理由」のうちの1つに当てはまればリクエストを拒否できる。

英国の平等法の下で保護されている従業員からのフレキシブルな勤務のリクエストを拒否すると、多くの場合差別請求のリスクが生じる。 雇用主が、女性従業員からのフレキシブルな勤務のリクエストを拒否すると、間接的な性差別に当たるリスクがある。これは、女性がその対応によって不利になる可能性が高いためである。

それと同じように、障害者は労働時間と労働におけるアレンジについて合理的な調整をリクエストすることができる。雇用主がそれを拒否すれば違法な障害者差別となる可能性がある。 雇用主は、間接的な差別ではないと正当化できる可能性があるが、そのためには、フレキシブルな勤務のリクエストを拒否するに値する妥当な事業目的があることを示す必要があり、それは「比例的」である。(すべての代替案が適切に検討されていることを意味する。)


ロックダウン後のリクエストへの応答

在宅勤務をしている多くの従業員、たとえば「変則的な勤務時間」で業務したり、子供や他の扶養家族の世話をしたりしてきた人は、家から生産的に働くことができることを雇用主に首尾よく「証明」したと感じるかもしれない。 就業時間と出勤時間の観点から、雇用主が元々の労働スタイルに戻したい場合、その程度の柔軟性を許容し続けてもビジネスにとっては長期的に機能しない理由についての証明が必要になる。

どのように証明できるか?は企業ごとに異なるが、クライアントからの苦情、生産性の低下、又は、オフィスベースのスタッフと在宅ベースのスタッフの間での業務の公平な割り振りの難しさなどがある。

これらのアプローチに関する一貫性は非常に重要である。 個々のマネジャーが独自に決定する権限を持つと矛盾が生じる可能性があるため、要求を処理するための明確で集約化されたプロセスを用意することが重要である。 雇用主は常に、フレキシブル勤務のリクエストを受けた、順番に検討し、積極的に対応する必要がある。 承認が得られない場合、雇用主は代わりに機能する可能性のある代替案または妥協案を提示する必要がある。 多くの雇用主は、これまで認められていなかったかもしれないパンデミック時の一時的な業務の取り決めを受け入れてきた。しかしながら、一方で、(例えば、子供の世話をしながらの業務が該当)永続的変更は、持続可能であると適切に考えられない限り、単純に合意すべきではない。

試用期間はフレキシブルな勤務に関する規則の一部を構成していないが、雇用主は、そのような対応により変更に同意させることできる。 コロナウイルスの状況下で、の在宅勤務自体が「試用期間」と見なされる可能性があるが、よりフォーマルな形式での「試用期間」の取り決めも可能である。 雇用主は、従業員のほとんどが職場に戻った後のビジネスへの影響を見たいと思うかもしれない。

雇用主が試用期間を設けたい場合は、試用期間の取り決めは一時的なものであり、あくまでも恒久的な変更ではないことを明確にしておく必要がある。 試用期間の長さ、いつ見直しされ、どのように成功(または失敗)が決定されるかを明確にすることが重要である。 場合によっては、試用期間を設けることで、雇用主が変更を検討する意思があったことを示し、長期的にはその取り決めがうまくいかない理由の証拠を提供するのに役立たせることができる。


海外からの勤務

一部の従業員は別の国に転居して、そこからリモートでの勤務を続けたいと思うかもしれないが、法的影響は簡単ではない。もし従業員が世界の反対側への移住を申し出た場合、異なるタイムゾーンの問題は別として、税務、社会保障、移民法、雇用への影響など、考慮すべきいくつかの問題がある。雇用主は、事前に慎重にデューデリジェンスを行わずに、このような申し出に同意してはならない。


将来

パンデミックの前から、フレキシブルな勤務スタイルを増やす計画は、昨年12月の女王の演説でも取り上げられた。英国政府は、雇用主に正当な理由がない限り、フレキシブルな勤務スタイルを原則とするという新しい雇用法案を提案している。 フレキシブルな勤務スタイルの機会を認めるというアプローチは、才能のある人材を引き付けるための手法(「馬に人参」ということわざがある)としてよく使用されており、より多くの企業がこういった手法が効果的であると認識し、将来的に増えることを理解している。


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