Jul 2020 – Covid-19に対する懸念を理由に従業員が仕事に戻ることを拒否できるか?

英国では、多くの雇用主が、職場を再開し従業員を可能な限り安全かつ効率的に仕事に復帰させるために必要な準備をすることに追われている。 現在の政府のガイダンスでは、在宅勤務が可能な従業員は可能な限り継続するべきだとあるが、これは一部の従業員にとっては選択肢の中に入らず、いずれにせよ、雇用主はこのガイダンスが変更されたときに備えておく必要がある。


雇用主の健康と安全における義務

大まかに言えば、雇用主は従業員に安全な労働環境を提供し、健康、安全、福祉を保証する法的義務を負っている。 雇用主は、従業員に仕事に復帰することを要請する時、(i)リスクアセスメントを実施する、(ii)職場を再開する際の安全衛生面について、特に新しい安全衛生対策の導入が必要な場合は、従業員(またはその代表者)に相談することを念頭におく必要がある。雇用主はリスクを完全に取り除く義務はないが、現在の政府のガイダンスへの準拠を含め、リスクを最小限に抑えるために合理的に実行可能なすべての手順を実行する必要がある。

従業員は、「深刻かつ差し迫った危険」にさらされるという思いから仕事に戻ることを拒否できるか?

ここ数週間、マスコミでは、従業員が深刻で差し迫った危険にさらされていると考えた場合に、職場を離れる権利があるという雇用法に関する立法について、いくつかの議論があった。 従って大多数の従業員は問題なく職場に戻ることが期待されるが、雇用主が当事項に関する保護とそれが実際にどのように機能するかを認識することが重要である。


従業員は、深刻で差し迫った危険にさらされているという正当かつ偽りのない考えにより就業を拒否した場合、いかなる不利益や解雇も受けない法的権利を有する。 雇用主が従業員に同意するかどうかは、従業員の考え方が妥当である限り重要ではない。 この保護は当初、深刻な健康と安全の緊急事態(火災やアスベストなど)を前提として制定されたが、Covid-19によって引き起こされた進行中の公衆衛生危機に対しても引き続き適用可能である。

一般的な見解では、保護が適用される場合、従業員は出勤出来ない間は全額給与を支給されて家に留まることが可能である。(従業員への給与の不払は通常、従業員の損害と見なされる。)業務にあたらなかった従業員への不払は必ずしも損害ではないと主張することは可能かもしれないが、これらの主張は前例がない為、比較的リスクの高い対応となるであろう。


雇用主は今何ができるか?

この問題が訴訟で検証されるまで、Covid-19という面において保護がどのように適用されるかを確実に予測することは困難である。 例えば、従業員が病弱である場合や、非常に深刻な健康や安全の問題がある場合にのみ適用されるのだろうか?

早い段階でより明確な方針が得られることを期待している。 ただし、当面の間、雇用主は従業員の健康と安全を保護し、政府のガイダンス(および関連する法律)を遵守する義務があることに注意する必要がある。 これには、適切な手指消毒剤と洗浄設備の提供、職場での人同士の距離の確保、従業員が出勤ラッシュ時間を回避するよう労働時間を調整出来るようにするなどの対応が含まれる可能性がある。

従業員が仕事に戻ることを拒否した場合、各々の状況を鑑みてケースバイケースで対処する必要がある。(例:従業員が脆弱であるか、障害があるか。) 従業員が提起した懸念は調査する必要があり、雇用主は書面で回答する必要がある。

職場の再開に関する質問やアドバイスが必要な場合は、yoko.nakada@lewissilkin.comまでご連絡ください。