Feb 2015 – 雇用者がなすべき責務としての就労権のチェック

内務省( Home Office) は、2014年5月に「不法労働者を雇用しないための雇用主向け手引き」(‘An employer’s guide to right to work checks’)と題する手引きを発行した。これはその後2014年12月に改正された。これは最近の2014年入国管理法(Immigration Act 2014)を考慮すると特に重要である。というのは、同法は、英国で就労する権利を持っていない人を雇用した雇用主に対する制裁金(civil penalties)を認めているからである。万一、従業員が違法に雇用されていたことが露見した場合、制裁金は最高2万ポンドになる恐れがある。

この手引きを最初に読むと、英国で営業している日本企業は、古いパスポートが現行の滞在資格証明書(Immigration Status documents)(無期限の滞在許可を含む)になっている日本人、またEU諸国、EEA諸国およびスイスの国民の家族の一員である同様の日本人を雇用することに懸念と躊躇を感じるかもしれない。このようなことが生じる原因は、「不法労働者を雇用しないための雇用主への手引書の中で、無期限の滞在許可は現在の有効なパスポートに記載されていなければならない」という文言が記載されているからである。

雇用主が求人応募者の就労権を審査するにはにはいくつかの手段がある。

 労働許可証チェックリスト
https://www.gov.uk/government/publications/right-to-work-checklist

 内務省発行手引き最新版-不法労働者を雇用しないための雇用主向け手引き
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/390363/an_employers_guide_to_right_to_work_checks_december_2014_v4.pdf

 適切な就労権証明書についての雇用主向け手引き
https://www.gov.uk/government/publications/acceptable-right-to-work-documents-an-employers-guide

雇用主は、内務省のチェックリストを正確に実行し、推奨されている3つの段階―すなわち、証明書原本を取得し、チェックし、コピーする―を守れば、制裁金の責任を負わされることはない。これによって、もし万一従業員が違法に労働しているとわかったとしても、雇用主は責任を負わない。

手引きの関連条項は次のように定めている。
「上の3段階[取得‐チェック‐コピー]を正しく実行していれば、もし上記の人が自社で違法に働いているとわかったとしても、制裁金の責任から免責されます。ただし、取得した免責のタイプに気を付ける必要があります。なぜならば、免責のタイプによって、その免責がどれくらい続くか、その後のチェックを行う必要があるかどうか、またいつ行う必要があるかが決まるからです。」

求人応募者が無期限の滞在許可の記載のない現行パスポートを持っていない場合、リストA(継続的な法律上の免除事由を証明する適切な文書)に記載された英国政府機関発行の公式なレターまたは文書(すなわち国民保険番号)を現行の滞在資格証明書として提出することができる。

EU諸国、EEA諸国またはスイス国民の家族の一員である非EEA諸国の国民については、最新版の手引きで内務省は、その人が居住カード(Residence card、永住カード(Permanent Residence card)、拡大EU居住カード(Accession Residence Card)または派生的居住カード(Derivative Residence card)を持っている場合、当該の非EEA諸国の移住者の現行または期限切れのパスポートのいずれかに滞在を許可する記載があれば良いと確認した。

雇用主が、現行パスポートに裏書きがない人の雇用をためらうという問題を回避するために、生体認証式居住許可(Biometric Residence Permit (BRP))を取得することを選択することもできる。これは必須ではないがひとつの選択肢である。これが特に関係するのは、EEA国民の家族の一員である非EEA国民であって、2006年EEA規則により内務省から発行された書類を取得する必要のない人である。

EEA国民自身とその家族である非EEA国民もEU法により就労権を持っている。このため雇用主は制裁金の責任を考慮しつつある人が就労権を持っているかどうかを判定することを迫られるので、難しい立場に立たされることがある。このような場合には、雇用主は内務省に助言を求めることができる。EEA国民およびEEA国民の家族の一員である非EEA国民についてのさらに詳しい手引きは、GOV.UKのEuropean Casework Instructionというページで見ることができる。

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