Jan 2016 – 複数の従業員の不当な行為とそのうちの一人のみの解雇

最近雇用上訴審判所は、MBNA Limited v Jones [2015],の審判の中で、不行跡であるとされた2人の従業員のうち、一人のみを解雇としたことは公正であると判断した。

上訴していた従業員(C)はMBNAに集金人として雇用されていた。2013年の11月にMBBAはチェスター競馬場でひとつのイベントを開催した。MBNAは従業員にはそのイベントはビジネスに関するものであるので、いかなる非道徳的な行為もMBNAのガイドラインに沿って対処されることを前もって従業員に注意を喚起していた。Cはそのイベントにもう一人の同僚BとBの姉妹のひとりと参加していた。BとCはこのイベントの始まる前からずっとイベントのあいだ中アルコールを飲んでいた。そこで、CはBの姉妹のひとりを抱き寄せるようなことをしたことから、BはCの膝を蹴り上げた。Cは報復としてBの顔を殴り返した。

Cはその後その場を去り、パブに行ったが、Bは彼の後を追ってゆきパブの外で待ちながらCに暴力を含む脅迫がまいのテキストメッセージを送り続けた。Bは実際には暴力行為に走ったわけではなく2人の間にはそれ以上何かが起きたということはなかったが、MBNAは懲戒のための調査を行い、懲戒聴聞会の後、Cは解雇され、Bは彼の送ったテキストメッセージが極端に暴力的であり不適切でもあるとして書面による最終警告を受ける事になった。Bが解雇を免れた背景はMBNAの調査によれば、CがBを殴り返した腹いせと直接的な関係がなかったと判断したからである。

Cは彼の解雇は無効であるとMBNAに訴えたが聞き入れれもらえず、結果として、雇用審判所にこの解雇は不公正であるとの訴えを起した。雇用審判所はCを解雇して、Bを解雇しないということは不公正であると裁定した。雇用審判所は、MBNAは挑発防衛行為をBに対して別な形で適用したとして、これは不合理であり、公平さを欠くと考えた。

MBNAは、Bの行為をCがBを殴るのに十分な挑発行為であったとは考えなかった。しかしながら、Bは殴られ、それを原因としてBが脅迫的なテキストメッセージをCに送ったことは常軌を逸した行為であり挑発行為として見なされるとした。これらの状況を鑑みて、雇用審判所はCの解雇は不公正であったと判断した。MBNAはこの判断を不服として上訴。

雇用上訴審判所は今回の上訴を認めたうえ、雇用審判所がthe Employment Rights Act 1998で定めている法的なテストをMBNAがCを解雇することがこの規定に沿って適切であったかどうかを検討しなかったところに問題があったと判断した。雇用上訴審判所は、雇用審判所がHadjioanouuのケースのガイダンス、それはCとBの状況が十分に似通っており真の類似があることを考慮されるべきかどうかを検討することであったが、これをしなかったと指摘した。そして、雇用上訴審判所は、雇用審判所が上記のテストを実行していたとしたら雇用審判所はBとCの状況が正確には類似でないことを認識できたはずであると述べた。

このケースは、雇用者に対して、個々の従業員の不行跡に基づく不行跡は個別に注意深く判断されるべきであると注意を喚起した。それは、あるケースの当事者となった従業員全員が必ずしも同じように処分される必要はないということを意味する。

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