Jun 2016 – 従業員の過失のある行動とACASの行動規範の適用の可否

雇用上訴審判所(EAT)は、最近のケースで、斡旋調停仲裁機関(Acas)の規定する懲戒と苦情の手続きは、更正または懲罰が要請される不行跡または成績不振を原因とする過失のある行動に基づく解雇の場合にのみ適用されることを確認した。従って、成績不振が正真正銘の病気に基づくものであるとしたら、従業員の過失のある行動はないものと見なされ、Acasの行動指針はこのような場合には適用されないと考えられる。

Holmes v Qinetiq Ltd [2015]のケース:Holmesさんは、Qinetiq Ltdで守衛として1996年から2014年まで働いていた。彼は背中、お尻 、足などの健康障害を理由として長期にわたる病休を取った。それを原因として、彼は彼の仕事をするに足る健康状態でないという理由に基づいて解雇された。

Qinetiq Ltdは、彼の解雇に一定の不当性があったことを認めた。
なぜならば、会社はHomesさんが健康問題を解決するための2014年に手術をしたことで彼が職場復帰できる健康状態かどうか判定するために最新の労働衛生リポートを入手することをしなかったからである。上訴審の聴聞会で、HomesさんはQinetiq Ltdが彼を解雇するときにAcas Codeの遵守を怠ったという理由で彼の補償金の増額を主張した。雇用審判所は、彼の解雇は懲戒的な意味を持たない病気に基づいた決定であるのでAcas Codeは適用されないとして補償金の増額を認めなかったので、Homesさんは上訴した。しかしながら、雇用上訴審判所はこの上訴を棄却した。

Acas Codeは、従業員が、懲戒又は懲戒行動につながる苦情、もしくは中傷にさらされたときのみに適用されるように明確に規定されている。これは、懲罰または更正が要請される不行跡または成績不振が、過失的な行動に基づかなければならないことを示唆している。

不行跡は過失的な行動を含むが、成績不振は過失または過失的ではない行動の両方を含む。雇用上訴審判所は、正真正銘の病気、または怪我を原因とする成績不振に基づいて過失が存在したことを、あるいは懲罰を正当化することは難しいと判断した。

病気または体調不良が原因の欠勤には、通常は懲戒的な解雇は発動されない。従って、Acas Codeの適応はないと考えた。
これは、例えば体調不良である場合に、適切な病休欠勤の通知手続きを怠る、あるいは体調不良が真実でないというような場合とは全く事情が異なる。これらのケースで発動される懲戒手続きは、病気を理由とする成績不振に対してではなく、従業員の過失的な行動に対してなされるからである。

このケースの場合は、懲戒手続きは発動されなかった、なぜならば彼の病気の問題とは無関係に、Mr Holmesは普通に仕事ができたし、懲戒処分または懲戒に価すると見なすような行動、又は懲戒規範に違反したというような事実がなかったからでる。従って、Qinetiq は、そもそもAcas Codeに従う必要がなかった。

この決定は、雇用者が正真正銘の病気の従業員を、成績不振などの事情に基づいて解雇する場合には、Acas Codeに従う必要がないという重要な法的なポイントを教えてくれる。この決定は、Acas Codeは成績不振な従業員になんらかの過失的な行動がある場合にのみ適用があるということを明確に確認しており、これは従業員の人事管理において教訓となる。


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