Jun 2017 – ラマダンにおいて雇用者が知っておくべきこととは?

イスラム教の聖なる月と言われるラマダン期間中、イスラム教徒は日の出から日没まで水も食事も摂らない30日間の断食に入る。多くのイスラム教徒の従業員はこの期間も普段通り勤務を続けるが、とても疲れるだろうことが想像できる。雇用者はこのこと状況を尊重しつつも、ラマダンを行わない側としては飲まず・食べずに職場で集中力を維持するのが難しいことが明らかなため、従業員の仕事の生産性レベルに関して懸念材料となりえると言える。

生産性のモニタリング − ラマダンを行なっている従業員の仕事をモニタ―すると、一日の終わりにかけて生産性の低下が見られるかも知れない。雇用者は、現場のマネジャーにこういった可能性を周知し、必要と思われる対処策を準備させておくことが大切である。

フレキシブル労働時間 − 従業員は一日の終わりにかけて疲労を感じることから、始業と終業時間を早めることを希望する可能性がある。
中には、ランチ時間も仕事を続けることで、その分、早めに終業することを希望する従業員もいるかもしれない。もしそういった希望があった場合には、従業員が労働時間規則を遵守することに注意を払った上で、希望を認めるか否か検討するべきであろう。
礼拝室 − ラマダンは、イスラム教徒が彼らの信仰心を表する時である。そのため、いつもよりも頻繁に礼拝をするかもしれない。もし希望があった場合には、雇用者として静かに礼拝ができる部屋を用意することを考慮するべきである。

休暇申請 − 雇用者は、ラマダン期間中にいつも以上の休暇申請を受けるかもしれない。多くの従業員が休暇申請をするであろう夏季にラマダンが重なると、日常業務に影響を与えるかもしれない。

宗教に対するポリシー − 雇用者は、すべての宗教信仰に対する特別なポリシーを導入することを考慮すべきである。こういったポリシーは、前述したような直面する問題への対応策作成の一助となりえる。また、現場のマネジャーと従業員にとっても、便利な参考情報となりえる。

差別について
英国では、従業員は2010年平等法のもと、宗教や信念を根拠とした差別から保護されている。特に直接または間接差別は、ラマダンの期間中に起きるかもしれない職場問題にとても関連がある。

直接差別は、雇用者が特定の宗教信者である従業員を、他の宗教信者である従業員と別に扱いをする時に起きる。間接差別は、雇用者が全ての従業員に平等に適用されるように見えるが、実際には特定の宗教信者のみだけに悪影響を及ぼす方法、ポリシーまたは基準を従業員に適用した場合に起こりえる。

本題についてご質問がございましたら、お気軽に弁護士の中田浩一郎(Koichiro.Nakada@lewissilkin.com)までご連絡を下さい。