Feb 2026 – 2026年の世界の雇用法:今年を特徴づける3つの主要トレンド

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2026年は、世界の雇用法にとって極めて重要な一年となる見通しである。抜本的な労働改革、EU全域で導入される賃金透明性義務、そしてAI規制の継続的な進展が、労働の世界に大きな変化をもたらそうとしている。本稿では、今後12か月を特徴づけると予想される主要な動向について解説する。

大規模な労働法改革

今年は世界的に労働法の抜本的な改革が行われる見込みで、雇用制度の枠組みに大きな変更が予想される。

欧州では、複数の国・地域において、労働者の権利拡充、執行体制の強化、コンプライアンス水準の引き上げを目的とした野心的な国内改革が進められている。英国では、30以上の個別改革から成る新たな雇用権利法(Employment Rights Act)が施行され、これは一世代に一度とも言える雇用権利法の大改革となる。一部の改正は、2026年4月および10月に施行される予定である。
また、ベルギーでは、経済成長、社会的公正、社会保障制度の持続可能性を目的とした、労働市場、税制、年金制度の近代化を図る野心的な政府改革が、2026年に施行される見込みである。

アジア太平洋地域の各国も、雇用主の柔軟性と労働者保護の強化とのバランスを図るため、法制度の近代化を進めている。インドでは今年前半に4つの新労働法典が全面施行される見込みで、既存の29の労働法を統合・置き換える歴史的転換となる。

日本では、40年以上ぶりとなる労働基準法の大幅な見直しに向けた準備が進められており、2026年以降に法案提出および段階的な施行が予定されているものの、具体的な時期は依然として不透明である。
タイにおいては、現在労働保護法の改正案2件が審議中であり、可決されれば従業員の権利が大幅に強化され、雇用主の義務が拡大される見込みである。


多様性、差別、賃金格差の報告

2026年においても、多様性(ダイバーシティ)および包摂性(インクルージョン)は引き続き注目を集めており、賃金透明性および差別防止施策が、世界各地で重要な規制変更を促している。

EU全域の人事部門にとって、男女間の賃金格差の是正と賃金平等性の確保は極めて重要な課題である。加盟国は2026年6月までに賃金透明性指令を実施する必要があり、これにより採用、賃金体系、昇進方針に影響を与えるより厳格な要件や、新たな個人の権利が導入される。また、男女平等と女性の権利も、EU立法の中心課題であり続けている。2026年3月に公表予定の「EU男女平等戦略2026-2030」では、女性の権利に関するロードマップを実施するための具体的な施策を示す予定である。

一方、米国では、多様性・公平性・包摂性(DEI)を巡る議論が、引き続き多国籍企業の戦略に影響を与えている。多くの企業が、相反する文化的価値観の調整を目的として、DEIに関する表現や方針の見直しを進めている。
2025年6月にロンドンで開催されたLewis Silkin法律事務所主催の国際人事カンファレンスでは、参加者の52%が自社のDEI方針を変更した、または変更を検討していると回答した一方、68%はそうした取り組みに対して従業員からの反発を経験済み、または予想していると回答した。

APAC(アジア太平洋地域)においても、差別禁止、ハラスメント防止、透明性を巡る規制は引き続き強化されている。シンガポールでは、「職場公平性(紛争解決)法案」が可決され、先に成立した「職場公平性法案」と合わせて「職場公平性法」を構成することとなる。同法は2027年後半の施行が見込まれているが、雇用主はすでに準備を進めておくべき状況である。日本においても、ハラスメント防止および男女平等の促進を目的とした法改正が、2026年を通じて段階的に施行される見込みであり、一部規定は2027年4月に施行予定である。


職場における人工知能(AI

AIガバナンスは、進化する規制環境の中で、職場へのAI導入を検討する雇用主にとって、本年も重要なテーマである。

EU域内では、2025年を通じて、各加盟国が「EU AI法」の執行規定が2026年8月2日に発効することを見据え、担当する執行機関の指定を進めてきた。職場におけるAIの影響を踏まえると、採用や人事評価分析など、HR関連の「高リスク」利用事例に対する監視が一段と厳しくなる見込みである。さらに、労使協議機関との連携も求められることから、今年はこれらの領域に大きな注目が集まることが予想される。

APAC地域では、AIガバナンスは進展しているものの、その枠組みは断片的であり、AIの実務利用の進展に規制が追いついていない状況にある。同地域のほとんどの国は、EU式の包括的な立法よりも、原則に基づくアプローチやセクター別の指針を好んでいる。この傾向に対する顕著な例外として、マレーシアでは、同国初となるAIガバナンス法案が2026年6月に議会提出される見通しである。

アメリカ大陸では、米国の動向に注目が集まる。現政権が目指す統一的な国家AI枠組みと、現在採用されている州ごとの規制が並存する現状との間の緊張関係に注目が集まっている。その他の国々でも、チリ、コロンビア、メキシコなどでAI規制法案が提案されている。さらに、ペルーでは、AIシステムの開発および利用に関する技術的・法的枠組みを定めた新規制の義務が段階的に施行され始めている。


雇用主にとってのポイント

2026年は、大規模な労働法改革、賃金透明性要件の強化、そして次なるAI規制の波など、雇用法制の広範な変化が到来する年であることは明らかである。もちろん、ここで掘り下げなかった重要な動向は他にも数多く存在する。具体的には、プラットフォーム労働規制の今後の変更、年金・社会保障制度の改革、移民政策とグローバルモビリティの動向、EU法規制の合理化提案、企業再編動向、そしてオフィス復帰政策など、多くの注目すべきテーマが控えている。

(※本記事は、英語原文を日本語に翻訳したものです。)

特定のケースにおいて具体的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所の  Abi Frederick弁護士Abi.Frederick@lewissilkin.com まで、ご連絡をお願いいたします。


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JAN 2026 – 2026年に雇用法制はどう変わるのか?

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