Sep 2026 – 最高裁、パートタイム労働者差別の判断基準を明確化

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英国の雇用法では、パートタイムという雇用形態を理由に従業員を差別することは違法とされている。最近の判決において、この法律の解釈が明確化された。英国最高裁判所は、パートタイム労働者であることを理由とする差別の請求について、他の差別請求よりも厳格な因果関係の立証は求められないとの判断を示した。パートタイム勤務が不利な取り扱いの「実質的な」原因であるならば、それだけで請求が認められるのに十分である。

長期にわたって争われてきた Augustine v Data Cars Limited 事件において、最高裁はパートタイム労働者差別に関する判例上の矛盾を解決する必要に迫られた。これまでの判決では、個人が、自身のパートタイムという地位が不利な取扱いの唯一の原因であることを立証する必要があるのか(立証のハードルが高い)、あるいは単に実質的な原因であることを立証すればよいのか(はるかに容易な基準)について意見が分かれていた。最高裁は後者の、より容易で広範な基準を採用し、パートタイム労働者差別における因果関係の立証基準は、他の差別請求の場合と同程度であることを確認した。これにより、事実上、雇用主が因果関係を理由に請求を退ける余地が狭まり、争点は不利な取り扱いに対する正当化の有無へと明確に移ることになる。


因果関係の問題

パートタイム労働者(不利な取り扱いの防止)規則2000に基づき、パートタイム労働者は、比較対象となるフルタイム労働者より不利に扱われない権利を有する。ただし、以下の条件を満たす場合に限られる。

  • その取り扱いの理由が、当該労働者がパートタイム労働者であることによるものであり、且つ
  • その取り扱いについて客観的な正当化事由がないこと

今回の最高裁判決は、この要件のうち前者、すなわち因果関係に関する部分を対象としたものであった。

本件の請求は、Data Cars社に雇用されていたプライベートハイヤーの運転手である Augustine 氏によって提起された。同氏は一般的なフルタイムの運転手よりも週あたりの労働時間が少なかった。すべての運転手は、雇用主の予約システムを利用するために、週148ポンドの「サーキット料金」を支払うことを求められていた。Augustine 氏は、この料金制度により、フルタイム運転手と比較して自身は実質的に1時間当たりより高額の利用料を負担しているとして、パートタイム労働者であることを理由とする差別に当たると主張した。

雇用審判所は、この取扱いは Augustine 氏がパートタイム労働者であったことによるものではなく、少なくともパートタイムであることが唯一の原因ではないと判断した。その後、本件は雇用控訴審判所および控訴院を経て、最終的に最高裁へ持ち込まれた。

最高裁は、パートタイム勤務を理由として不利に扱われた労働者は、その不利な扱いの唯一の原因がパートタイムであることだったと立証する必要はないと判示した。パートタイムであることが「有効な原因」の一つであれば十分である。言い換えれば、パートタイム労働者は、自身のパートタイムという地位が不利な取り扱いを生じさせた要因の一つであったことを示せば足りる。


実務への影響

今回の最高裁判決により、パートタイム労働者差別に関する法解釈は、差別事案一般に適用される通常の因果関係の考え方と整合することとなった。実務上、これにより、不利な取り扱いが単にパートタイムという地位によるものではなく、複数の理由によるものであるという、より技術的な主張の余地が封じられた。焦点は、取扱いに至った細かな理由の分析から、その取扱いが客観的に正当化されるかどうかへと移ることとなった。

また最高裁は、不利な取り扱いに他の理由が存在したという事実は、正当化の有無や賠償額の算定において考慮され得ると述べている。したがって、本判決はパートタイム労働者による請求の範囲を拡大する一方で、雇用主は適切な事案では依然として、パートタイム労働者と異なる取り扱いを正当化する従来の主張を行うことが可能である。

雇用主にとっては、パートタイム労働者に対する取り決めを見直す良い機会となるかもしれない:

賃金:
パートタイム労働者が、同等のフルタイムの同僚と同じ時間単価の賃金を受け取れるよう、単純な比例計算(pro rata)を行う必要がある。昇給や賞与の支給においても、パートタイム労働者が不利に扱われないよう注意が必要である。とりわけパートタイム労働者とフルタイム労働者の扱いに違いがある場合は、その理由を文書化しておくことが常に重要である。

福利厚生:
不適切な場合を除き、福利厚生についても比例配分原則を適用すべきである。例えば、フルタイム労働者に年間30日の有給休暇が付与される場合、勤務時間がフルタイムの50%である従業員には15日を付与すべきである。一方で、医療保険、従業員割引、社用車などのように比例配分が困難な福利厚生については、通常、福利厚生全体を提供するか、提供しない場合はその理由を客観的に正当化する必要がある。

定額料金・固定負担:
Augustine事件では、労働時間数に関係なくすべての労働者に一律の料金が課されていたことが問題となった。これと類似する定額利用料やアクセス料金制度については見直しを行い、可能かつ適切な場合には比例計算方式の導入を検討することが望ましい。比例計算が可能であるにもかかわらず採用しない場合には、明確かつ客観的な根拠を示す必要がある。

祝日(Bank Holiday)の取扱い:
一部の雇用主は「通常の勤務日」という基準を採用しており、パートタイム従業員が有給の祝日を取得できるのは、その祝日が通常の勤務日のいずれかに当たる場合に限られる。この手法に関する代表的な判例である McMenemy事件 は特殊な事案であった。雇用主が週7日制を採用しており、パートタイム従業員とフルタイム従業員の両方に同じ「通常の勤務日」という基準を適用していたためである。水曜日から金曜日のみ勤務するパートタイム労働者が、月曜日の祝日の恩恵を受けられないことを不服として提訴したが、月曜日に勤務しないフルタイム労働者も同じ立場に置かれることから、請求は認められなかった。最高裁は Augustine事件において McMenemy事件の結論自体には同意したものの、比較対象となるフルタイム労働者が通常の月曜日から金曜日勤務である一般的なケースについては、依然として十分な指針が示されていない。Augustine判決により、雇用主が因果関係を争う余地は限定されるため、今後争いが生じた場合の焦点は正当化の有無となる。そのため、実務上はパートタイム労働者にも比例配分による祝日休暇を付与する方が安全な対応といえる。

その他の不利な取り扱い:
パートタイム労働者に対する不利な取り扱いは、さまざまな場面で発生し得る。そのため、人事上の意思決定を行う際や既存制度を見直す際には、パートタイムという雇用形態を常に念頭に置くことが重要である。例えば、最近のある事例では、パートタイム労働者がフルタイム労働者よりも勤務時間に占める週末勤務の割合を高くすることが求められていたが、これは不利な取り扱いに当たると判断された。また、近年は「オフィス出社義務」の適用方法についても議論が生じている。例えば、フルタイム労働者に対して週3日から4日の出社を求める場合、それをパートタイム労働者へどのように適用するかが問題となり得る。


Augustine判決から得られる最大の教訓は、パートタイム労働者が、自身のパートタイムという地位が不利な取り扱いの一因になっていると主張できるかどうかに着目することである。そうした主張が可能であれば、その労働者は訴訟を提起できる可能性が高くなり、その後の主要な争点は、当該取扱いが客観的根拠により正当化されるかどうかとなる。

Augustine v Data Cars Limited の判決文はこちらから参照可能である。

(※本記事は、英語原文を日本語に翻訳したものです。)


特定のケースにおいて具体的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所の  Abi Frederick弁護士Abi.Frederick@lewissilkin.com まで、ご連絡をお願いいたします。

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