Jun 2022 – ウクライナからの難民に対する雇用の場の提供


国連難民高等弁務官事務所によると、難民の統合に重要な役割を果たすのは、自給自足と社会的つながりを可能にする有意義な雇用であるという。英国政府は現在、ウクライナから英国への入国者を対象とした3つの移民制度を運用しており、この度これらの制度と労働市場へのアクセスとの関係について、もう少し詳しい内容が明らかになった。

政府はこの度、ウクライナからの難民に雇用の機会を提供したいと思う企業向けの新しいガイダンスを発表したが、これは円滑なプロセスにつながるのだろうか?


どのような実務的な取り決めがなされているのか?

新しいガイダンスには、雇用主が募集している求人情報を入力するためのアンケートへのリンクが含まれている。これは労働年金省と難民の就労を支援する慈善団体である難民自立支援ネットワーク(REN)の両方からの支援の入り口として機能する。ガイダンスによると、求人情報が提供されると、雇用主は労働年金省から連絡を受け、求人情報はジョブセンター・プラスとRENで共有されることになる。


雇用主に対するガイダンスはあるか?

具体的なガイダンスは限られているが、専門職資格の同等性について理解を深めたい雇用主は、UK Centre for Professional Qualificationsを参照することができる。ここでは個人および雇用主が規制対象の職業への参入について理解するための無料のサービスが提供されている。

ただし、このガイダンスは、政府の関係各省庁や国際機関のグループが2019年に作成したガイドライン「Tapping Potential ガイドライン」とリンクしている。この出版物は、ウクライナでの紛争より前のものであり、新しい移民制度には特に触れていない(特に就労の権利の項目はウクライナからの入国者には適用されない)が、雇用主が難民の採用募集・雇用する際の情報とアドバイスを提供している。

英国の差別禁止法では、雇用主がある国籍を他の国籍より優先させることができる範囲を大幅に制限している。このことについては、こちらで詳しく説明している。 Tapping Potentialガイドラインは、平等法の「タイブレーカー」規定を参照している。 これは、同法の「ポジティブ・アクション」条項の一部である。 2人の候補者が同等の資格を持っている場合に適用され、そのような場合、影の薄いグループからの候補者を選ぶことができる。 しかし、これらの規定は範囲が限定されており、雇用主が頼るにはリスクが高い可能性がある。

しかし、「ポジティブ・アクション」規定の枠内で雇用主が検討できる対策は他にもあり、以下が例となる。

  • 難民を対象とした、または難民を含む職場体験の場や就労準備プログラムの展開
  • 難民の語学力向上の支援
  • 難民がキャリアを積めるよう、昇進の道やメンター制度の提供

在留資格についての位置付けは?

ガイダンスによると、ウクライナ・ファミリー・スキーム、またはウクライナ・スポンサーシップ・スキーム(Homes for Ukraine)を利用して英国に入国した人々には、3年間の英国滞在許可が付与され、英国に居住し、就労し、福利厚生や公共サービスを利用することができる。

また、2022年5月3日にはウクライナ延長スキームが開始され、英国での滞在を3年間延長するための別の手段が提供された。従業員や雇用主は、この制度の利用を決定する前に選択肢を慎重に検討する必要がある。

ウクライナ延長スキームによる入国許可は、就労権を含む他のウクライナのスキームと同じ権利を提供し且つ無料のスキームだが、考慮すべきいくつかの要因は以下の通りである。

  • 従業員が英国への定住を希望しているかどうか – 将来的には状況が変わるかもしれないが、現在、ウクライナ延長スキームは定住につながるものではなく、またこのスキームでの滞在期間は他の移民ルートでの定住にカウントされるものではない。
  • 従業員の扶養家族として過去に英国移民許可を取得していないなど、ウクライナ延長スキームの適用範囲に含まれない扶養家族の参加を希望しているかどうか
  • 雇用主がスポンサールートでの従業員の雇用を希望しているかどうか

ウクライナ出身者の英国移民規定については、こちらの別記事をご覧ください。


もし、特定のケースにおいて、具体的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所のAbi Frederick Abi.Frederick@lewissilkin.comまたは中田 浩一郎koichiro.nakada@lewissilkin.comまで、ご連絡をお願いいたします。


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