Jul 2022 – 【イギリスの人事部】海外からのリモートワーク – 雇用主へのアンケートの結果


この度我々は雇用主に対して、従業員からの「海外からのリモートワークの希望」にどのように対応しているか横断的に調査したところ、以下のような結果が得られた。

我々の調査では、2022年5月5日から5月20日にかけてデータを収集し、21のセクター、合計80万人以上の従業員の雇用主から回答を得た。


主な調査結果

今回の調査では、大多数の雇用主が対応を迫られている問題であることが確認された。回答者の98%が、パンデミック開始以降、従業員から海外からのリモートワークの要請を受けたことのことだ。

また雇用主は、従業員に海外からのリモートワークの柔軟性を与えないと従業員が競合他社に移ってしまうことをある程度懸念していることが分かった。このことは、雇用主は、海外からのリモートワークの柔軟性を、単なる採用ツールとしてではなく貴重なスタッフを維持するための手段として捉えていることを示唆している。

この分野は発展途上であり、複雑で事実に左右されやすく雇用主にとっては交渉の努力が必要となる。税・社会保障、現地の労働の権利、データプライバシー、移民法など、雇用主にとって多くの問題や潜在的なリスクが生じるが、これらについては弊社Inbrief guideで詳しく解説している。しかしながら、おそらく雇用主にとって心強いことに、実際には海外でのリモートワークの取り決めの大半はまだ海外当局によって精査されていないことが我々の調査で示唆されている。

しかしながら、この種の取り決めが複雑で潜在的にリスクを伴うものであることは、今回の調査で、大多数の雇用主(約5社に4社)が海外でのリモートワークを認めているにも関わらず、どのような制限を課すかについては明確なコンセンサスが得られていないようだということを示唆していると考えられる。


雇用主は海外からのリモートワークの権利をどのように制限しているのか?

今回の調査では、海外からのリモートワークの取り決めについて、制限事項がある場合はその内容を回答してもらった。

  • 期限:海外でのリモートワークを許可している雇用主の3分の1は、滞在期間に特定の制限を設けず、それぞれの要請をケースバイケースで判断している。具体的な制限を設けている企業では様々なアプローチが見られた。最も多かったのは、12ヶ月のうち1ヶ月までというものだった。(回答者の26%)
  • 特定の国への制限: 半数以上の雇用主は、従業員が現地で働く権利を取得できる場合、その国での就労に具体的な制限を課していない。その代わりに、ケースバイケースで就労を許可するかどうかを決定している。制限を課している企業の理由としては、税金、制裁、サイバーセキュリティ、初日からの従業員の権利、時差などが挙げられている。また、回答者の21%が、従業員はすでに恒久的な会社、支店、又は駐在員事務所のある国からしかリモートで働くことはできないと回答している。
  • 経費の支払い: 半数近くの雇用主は、海外勤務を希望する従業員に対して費用の負担を求めなかったが、4分の1は発生した費用の全額を負担するよう求めた。また、ビザや税・社会保険料、現地で必要な福利厚生費などを含む特定の費用を負担するよう求めるようなケースもあった。
  • 雇用契約方法: 最も多かったのは「元の会社に籍を置いたまま海外勤務をする」方法だった。しかし、それ以外にも、出向、現地法人や支店での直接雇用、雇用主の記録など、様々な方法が用いられていた。

今後に期待できることは?

調査の結果、大多数の雇用主が従業員に海外でのリモートワークを許可していることが分かった。しかし、これらの取り決めに課された制限は企業によって大きく異なる。このような格差は、海外でのリモートワークの取り決めが複雑で事実に左右されるため「一律に対応する」アプローチを取ることが困難なことが原因であると考えられる。さらに、このような取り決めに対する需要増加のペースは、雇用者と立法者の双方にとって、追いつくのが難しい状況になってきている。

この分野は発展途上であり、今後も雇用主にとって重要課題であると思われる。一部の国々では既に海外からのリモートワークを合法化し、促進するための積極的な対応(特定のリモートワークビザの導入など)が取られており、雇用主による海外からのリモートワークに関する正式な規定の導も増えてきている。従って、各雇用者がどの程度リスクを取るかによって決定される部分もあるが、いずれはより標準化されたアプローチが現れてくると思われる。


主な調査結果をまとめたインフォグラフィックは、こちらからダウンロードできます。


もし、特定のケースにおいて、具体的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所のAbi Frederick Abi.Frederick@lewissilkin.comまたは中田 浩一郎koichiro.nakada@lewissilkin.comまで、ご連絡をお願いいたします。


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