Jul 2024 – 総選挙後の論点:不当解雇に関する労働党の計画とは?
労働党は、「職場における権利を、この一世代で最大にアップグレードする」と公約している。そしてこの公約の重要な部分は、雇用初日から不当解雇されない権利を含む基本的な個人の権利を提供するという提案である。これは雇用者と被雇用者にとってどのような意味を持つのだろうか?
(a) 労働党の約束
労働党は、「すべての労働者について、入社初日から基本的な個人の権利」を約束し、労働者が不当解雇からの保護を受けるために最長2年間待たざるを得ない制度を廃止するとしている。しかし、その「労働者のための新たな取り決め」は、能力、行動、リダンダンシー、又は「公正で透明性のある規則とプロセスによる試用期間」を理由とする公正な解雇を妨げるものではない、という点で雇用主を安心させるものである。同党は、試用期間は雇用主が新入社員を評価するためのものであるが、新規採用された労働者が理由もなく解雇されることはないとしている。
(b) なぜ不当解雇法を変えるのか?
労働党は、「基本的権利を得るまでに時間がかかるということは、転職のリスクが労働者に重くのしかかることを意味する」と主張し、その結果「人々が転職に消極的になり、生産性にリスクをもたらす」と指摘している。労働党は、従業員が転職のリスクを回避できるようになれば、より給与の高い仕事に転職して給与を増やすことができるため、従業員にもメリットがあり、雇用主にとっても、その仕事に最適な候補者を確保できる可能性が高まるため、メリットがあると考えている。雇用の安定が高まれば、安心感のある労働者は消費に走りやすくなるため、経済も活性化するかもしれない。では、「ウィンウィン(お互いに利益がある)」になるのだろうか?
この提案は意図しない結果をもたらす可能性もあるのだろうか?例えば、雇用主が採用の際に安全策をとり、個性的な人にチャンスを与えようとしなくなり、多様性を向上させる動きが弱まるようなことはないだろうか?あるいは、従業員数の調整によりコストがかかり得る場合、雇用主は採用活動を延期する可能性もあるだろうか?これは恐らく、この変更が実際にどのように導入されるかの詳細次第であろう。
(c) この変化は実際には何を意味するのか?
労働党が取りうるアプローチはいくつかある。ここでは、最も可能性の高い3つの選択肢を検討する。
オプション1:単純に適用期間を撤廃する
労働党が従業員に「即日」不当解雇の権利を与える最も単純かつ迅速な方法は、単に適用期間の要件を削除する法案を可決することである。
雇用権法に更なる変更を加えなければ、従業員による不当解雇の申し立てを回避したい雇用主は、現行の「公正な」解雇理由(能力・資格、素行、余剰人員、違法性、または「その他の実質的な理由」)のいずれかを立証する必要があることになる。また、雇用主は、その理由を解雇の十分な理由として扱うにあたり、その状況において合理的に対応したことを示す必要がある。
さらに、雇用主が従業員の行為や能力を理由に解雇したい場合には、懲戒・苦情処理手続きに関するACAS(斡旋調停仲裁機関)の実践規範に従う必要がある。同規範は試用期間には言及していないので、同規範が改正されない限り、雇用主は試用期間以外の他の従業員には、実践規範で推奨をされた完全な手続きに従わなければならない。
雇用主が入社1日目の従業員に対して10年目の従業員と同じプロセスを踏むことを要求するのは、間違いなく企業にとって不合理な負担となる。新入社員が職務においてどのような能力を発揮するかは、実践してみなければ分からない部分であり、職務に耐えられないと判断した場合、雇用主は新入社員をより簡単に解雇できるようにするのが公平だと思われる。その一方で、その社員に大きな影響を及ぼす可能性のある、性急すぎる判断を下すよりも、雇用主はその社員がサポートやトレーニングによってうまくこなせるかどうかを見極めることが求められるべきである。
しかし、このアプローチは、雇用主は試用期間の利用が可能であるという労働省の言及とは相容れないように思われる。
オプション 2 -試用期間中であれば、いかなる解雇も公正である
もう一つのアプローチは、適用期間を撤廃すると同時に、試用期間中の従業員は不当解雇を申し立てられないとする法改正である。
これは雇用主が試用期間を利用できるという労働党の約束に合致するものであるが、従業員に不当解雇を申し立てられる「入社初日」の権利を与えることにはならない。恐らく現行の2年間の適用期間よりはるかに短いとはいえ、適用期間を再導入するだけになってしまう。6ヶ月の試用期間は一般的であり、事実上、(1974年から1979年の労働党政権下以来)歴史的に最も短い適用期間に戻ることになる。
また、このアプローチは、新入社員が試用期間をクリアしなかった場合でも解雇するには手続きと理由が必要であるという点で、労働党が使用している文言とも矛盾するように思われる。
オプション 3 - 試用期間の見送りを解雇の新たな公正理由に
第三のアプローチは、労働党が適用期間を撤廃し、試用期間の見送りを解雇の新たな公正な理由とするよう法律を改正することである。
これは、試用期間中に従うべき適切なプロセスを明確に扱うための法定実践規範の改正(または新設)の草案をACASに依頼することとセットとなる可能性が高い。新しい規範の利点は、試用期間中に、より短くシンプルなプロセスを踏めることである。
例えば、解雇を最終決定する前に本人との面談を行い、本人に意思表示の機会を与える、というようなことである。現在、勤続2年の従業員を乏しい仕事ぶりで解雇する際に求められる、より広範な一連の警告を行う前に、雇用主が新入社員が適任かどうかを見極める合理的な機会を与えられることは公平であると思われる。
これは最も起こり得るアプローチである。
労働党がどのようなアプローチを取るにせよ、提案の詳細については(この記事を書いている時点では)まだ答えのない疑問が残っている。
結論
労働党は「(労働者のための)新たな取り決めの導入に関する完全且つ包括的な協議」を約束している。従って、この変更が実際にどのように機能するのか、また雇用主は協議に応じることができるのかについての詳細が明らかになるものと思われる。
我々はどのような協議にも応じるつもりですので、協議文書発表後、是非皆様の意見をお聞かせください。
それまでの間、雇用主は恐らく、より良い採用決定を行うために採用プロセスの厳格化の検討を望むであろう。また、多くの雇用主は雇用契約を見直し、あらゆるレベルにおいて試用期間の利用検討することになるだろう。
労働党の仕事に見合った報酬を与える計画:「(労働者のための)新たな取り決めの導入」 についての
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