Sep 2023 – 職場における読心術-良いことなのか?それとも私たちが予期しているようなこの世の終わりとなるのか?

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ICO Information Commissioner’s Office-英国個人情報保護監督機関)は2023年6月8日、ニューロテクノロジーに関する初の報告書を発表した。ニューロテクノロジーとは、個人の脳や神経系(「ニューロデータ」)から直接データを記録・処理する、急速に台頭しつつある技術である。


同委員会は報告書の中で、現在市場で入手可能なニューロテクノロジー(脳深部刺激装置のような侵入的なもの、脳から発せられる信号を読み取り解釈するヘッドバンドなどの非侵入的なものを含む)、規制上の問題点、ニューロテクノロジーが現在使用されている、あるいは今後使用されることが予想される領域の例について論じている。

現在、神経系障害の治療が最も明白な用途であることから、医療業界がこの技術の主な焦点となっているが、ICOは報告書の中で、この未来的に使用されるであろうその他の領域についても考察している。その一例が、採用目的での使用から、安全性や生産性のモニタリングまで、職場におけるニューロテックの展開である。当然のことながら、ICOはこれをリスクがないとは考えておらず、このような状況でのニューロテックの使用を検討、開発、実施する際に、組織が留意しなければならない問題があると考えている。


AIと同様に、テクノロジーに基づくモデル自体にバイアスがあり、人々に関する不正確なデータや仮定を包摂してしまう可能性があるという点で差別を生じる可能性がある。特に問題となるのは、ニューロダイバージェントの人々で、彼らの脳や神経系は、通常                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  の人々から記録されたものとは異なるパターンを示すことがある。ニューロテック・システムがその人のニューロデータを好ましくない、あるいは否定的であると示した結果、その深く沁み込んだバイアスのみによって、仕事の機会を逃したり、昇進を見送られたりする可能性があり、これは明らかに懸念される分野である。したがって、ニューロテック・システムは、このような深く沁み込んだバイアスのリスクを軽減するために、できるだけ幅広いパターンのデータを使って「訓練」されることが重要であり、このようなシステムにアクセスしようとする組織は、このことを念頭に置くべきである。


ニューロデータを処理する人々にとってのもう一つの問題は、適切な法的根拠に基づいた処理をどのように明確にするかということである。明示的な同意を唯一の法的根拠とすることを求める声もあるが、ニューロデータの生得的な性質から、これには問題がある。ニューロデータの出力は無意識のうちに生成されるものであるため、どのようなデータの処理に同意しているのか、個人がコントロールすることは限られているか、あるいは不可能であろう。このため、同意の正当性を証明すること自体難しく、不可能になる可能性もある。職場においては、雇用者と在籍従業員や見込み従業員との間の力の不均衡という通常の問題もあり、一般的には同意が無効になる。

ニューロテックの導入を検討している組織は、データ最小化の原則をどのように遵守するか、つまり、特定の目的を達成するために直接的に関連のある必要なデータのみを処理するかについて、慎重に考える必要がある。ニューロデータは無意識のうちに生成されるため、収集されたデータが使用目的に完全に関連しているとは限らない。収集されたデータを処理・分析することなく、何が適切で何が適切でないかを組織はどのように認識するのだろうか。これは、この技術の開発者自身への問題かもしれないが、ビジネスには、必要なデータのみを収集・処理するようなパラメータを確保することが賢明であろう。

データに関する個人情報の権利への対応も、まだ答えの出ていない問題である。ニューロデータの複雑さと、それがどのように提示されるのか/される予定なのかについての疑問は、個人情報の権利に関して確実に問題を引き起こすだろう。例えば、個人情報の開示請求の後、ニューロデータはどのように扱われるのだろうか?ICOは将来、ニューロテクノロジーに関する正式なガイダンスを発表する予定であり、今後、ICOがこれらの疑問に対応し、将来的にはニューロテクノロジーに関する正式なガイダンスを発表する予定であることが期待されている。しかし、これは最近の国際的なデータの移転の問題を中心として、ICOがやるべきことの非常に長いリストの一部である。AIは又、ICOがこれらの仕事を効率的に行うことにも貢献している。
ニューロテックを取り巻く最近の問題の台頭、急速な発展、複雑な規制上の問題などは、具体的なガイダンスが早急には示されない可能性を示唆している。


 もし特定のケースにおいて具体的なアドバイスが必要な場合は、Abi Frederick Abi.Frederick@lewissilkin.com(LewisSilkinLLP法律事務所)又は弁護士 中田浩一郎 koichiro_nakada@btinternet.com に連絡をお願い致します。


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