Apr 2023 – 雇用主はどのように癌を患う従業員のスティグマを減らしサポートできるか

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この記事では、職場における癌の影響と従業員をサポートするために、雇用主ができることについて説明をする。


Cancer Research UKは、2人に1人が生涯のどこかで癌を患うと予測している。検診の充実、平均寿命の延び、人口動態や危険因子(肥満など)の変化により、診断率は増加の一途を辿っている。現実に、患者として、パートナーとして、家族として、もしくは友人として、癌は多くの従業員の人生に触れることになる。朗報は、研究と治療法の改善により、生存率が上昇し死亡率が低下していることである。しかし、癌と診断されると大きなショックを受け、癌患者であることに恐怖を感じ孤立してしまうという事実を取り除くことはできない。


癌と共に働くこと

癌患者の多くは現役世代であり、仕事に就いているため、雇用主は職場での癌に対するスティグマを軽減するために重要な役割を担っている。現在の調査では、癌患者の50%が、自分の診断結果について雇用主に話すことさえも恐れていることが分かっている。

多くの人にとって、癌の診断や治療後に仕事を続けること、あるいは仕事に復帰することは、日常の感覚、自信、経済的な自立を取り戻すための中心的な役割を担っている。仕事はその人のアイデンティティの重要な部分を形成することが多く、自尊心、精神面の健康、ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)を高めることにつながる。

人事の担当者やマネジャー職の多くが、キャリアの中で同僚が癌治療を受ける状況に直面する可能性が高い。治療はますますパーソナライズされ、長期化し、人によって異なる形で影響を受けることになる。心理的な影響や疲労を含む副作用は、治療が終わった後も長く続くことがある。マネジャー職にとって、病状、治療法、仕事に影響を与える潜在的な副作用についての知識は極めて重要である。

癌は人生のどの時期にも患う可能性があるが、罹患率は年齢とともに大きく上昇する。雇用主は、スキルを持つ人材の継続的な不足に対処するため、年齢が高めの労働者を引き付け維持しようと努めているが、癌に関する職場の支援政策は、より広いヘルスケア制度や健康維持イニシアチブと連携した「50代以上に優しい」福利厚生パッケージの一部となり得るだろう。


癌を患う同僚へのスティグマをなくしサポートする

2023年1月17日、ダボスの世界経済フォーラムで、30以上のグローバル組織が業界横断的なイニシアチブ「Working with Cancer」を立ち上げ、癌で影響を受けた従業員を支援し、職場における癌のスティグマを軽減することを約束した。

これは非常に喜ばしいニュースである。癌と診断された従業員は、人生最大かもしくはそれに匹敵する困難な時期を経験することになる。では、雇用主は従業員をサポートするために何ができるのだろうか?

  • 人事マネジャーの育成: ラインマネジャーは、従業員にとって最初の窓口であり、日々のマネジメントを担うことが多い。残念ながら、CIPDが実施した調査によると、人事担当の50%が、ラインマネジャーは長期治療が必要な健康状態にある部下を管理するための知識や自信がないと考えており、約40%が、ある程度の調整を行うことについての理解を深めるためのマネジャーサポートに対し課題があると報告している。マネジャーは、癌の影響、治療法、仕事への影響、思いやりを持って困難でデリケートな会話をする方法について理解する必要がある。また、マネジャーは、福利厚生やサポート・サービス、働き方の選択肢に関する情報などに関して従業員に案内役ができるようになる必要がある。癌の体験は人それぞれなので、マネジャーは従業員の個々のニーズを理解するために時間をかけるべきである。 
  • 柔軟な対応:病院の予約、検査、スキャン、治療で、従業員が病院に行く必要が否応なしに多くなるため、柔軟に対応し仕事量をサポートすることで、従業員は大きなプレッシャーから解放される。2010年平等法では、癌は障害とみなされ、雇用主は職務や職場に合理的な調整を行う法的義務がある。これには、休暇の取得、フレックスタイム制、職務の変更、リモートワーク、段階的な職場復帰の準備などが含まれる。大部分の人にとっては、こうした調整の必要性は永久的なものではなく、一時的なものである可能性が高い点を留意しておくことが重要である。
  • 介護者の権利の尊重: 従業員が癌患者を介護している場合、更なるサポートが必要になることがある。介護者は、緊急時に愛する人の世話をするために無給の休暇を取ったり、障害を持つ人と一緒にいることを理由とする差別から保護されるなど、職場で一定の権利を有している。政府も近い将来、1週間の介護休暇を導入する予定である。フレックスタイム制を導入することで、介護者が仕事を続けやすくなる可能性もあるため、たとえ短期間であってもフレックスタイム制を申請する権利があることを介護者に周知しておくとよいであろう。
  • 癌規定の履行: 規定では、診断、病欠、調整、治療中の勤務、長期疾患の管理、精神面の健康に関する明確なガイダンスとサポートを示すことが出来る。規定があれば、癌診断に対するスティグマをなくすことができ、同僚がオープンになることの助けになる。また、従業員が利用可能なサポートについて理解するのにも役立つ。
  • 話の場を設ける: 癌に対する認識を高め、従業員が受けた癌による影響についての経験を共有する場を設ける。癌は、特に異なる文化圏では、大きなタブーとして扱われることがある。世界対癌デーやマクミラン・コーヒー・モーニング(癌と共に生きる人々を支援するための世界最大の資金調達イベント)の開催など、オープンな対話の場を設けることで、そのスティグマを減らすことができる。

オープンで、包括的で且つ支援的な職場を作り、思いやりのある人事管理を実践することで、癌患者や大切な人を介護する人々が自分の健康状態を管理する上で大きな違いをもたらすことができる。癌は、私たちの大多数に直接的または間接的に影響を及ぼすが、それは癌患者が貴重な労働力として活躍できないということを意味するものではない。理解がある柔軟な雇用主は、従業員の負担を減らし、不安を軽減し、すべての従業員に、職場において癌に対処する自信を持たせることができる。


もし、上記の件に関連して、特定のケースについて具体的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所のAbi Frederick Abi.Frederick@lewissilkin.com又は中田 浩一郎koichiro.nakada@lewissilkin.comまで、ご連絡をお願いいたします。


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