Jun 2024 – 英国総選挙は雇用法にとって何を意味するのか?

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労働党は、労働者の権利を改革する野心的な計画を掲げており、雇用法は選挙キャンペーンの焦点となる。マニフェストの最終決定が行われている最中だが、雇用主にとっての主要な公約と質問を以下に要約する。


英国の総選挙は2024年7月4日に実施される。選挙マニフェストは間もなく発表されるが、労働党が立法化を計画している分野はすでに判明しており、労働者の権利が優先されるだろう。世論調査で労働党がリードしていることから、労働党はわずか6週間後に政権に就く可能性が高い。そのため、雇用法は多くの人が考えているよりも早期に改正される可能性がある。労働党の計画にはまだ不明な点や疑問符が多いが、雇用主は職場紛争を引き起こしかねない選挙に注意する必要がある。


(a) 雇用法に関する労働党の計画

労働党は、選挙に勝てば「労働者のためのニューディール」を政権構想の中核に据えると約束した。雇用法案が起草され、選挙を待っていると報じられている。労働党は、政権獲得後100日以内、つまり2024年10月12日までに立法プロセスを開始するとしているが、それは単なる白書である可能性もある。

2021年版グリーンペーパー(英国政府が国会審議用に作成する政策提案書)や、最近では労働組合会議との協議に関する報告書などの情報源によれば、労働党の提案は雇用法全般にわたる基本的権利に影響を与えることになる。

主な計画には以下のものが含まれると思われる:

  • 不当解雇されない権利を含む、より充実した雇用初日からの権利(ただし、雇用主は試用期間を設けることができる)
  • ゼロ時間契約の禁止(要請があった場合を除く)、直近12週間の労働時間に基づく正規労働時間に対する新たな権利
  • 労働組合が職場にアクセスする新たな権利
  • 雇用権の国家による執行
  • 法定傷病手当の強化
  • 「解雇と再雇用」の制限
  • 最近のストライキ防止法の廃止
  • セクシャル・ハラスメントに対する保護の強化
  • 人種別並びに障害者の賃金格差報告の導入
  • フレキシブル勤務に対する権利の強化
  • 仕事を切り離す権利(またはこれのソフトバージョン)
  • 共同育児休暇の見直し
  • AIの規制強化
  • 最終的には、英国の雇用権の3つの枠組みを、労働者と自営業者だけのシンプルな2つの枠組みに置き換える

雇用主はこれらの計画について多くの疑問を持つだろう。

場合によっては、改革には何年もかかりうるが、少なくとも現時点では大規模な改革に対する政治的な意欲はあるようだ。


(b) 雇用法に関する保守党の計画


保守党は、雇用法に関する計画についてほとんど述べていないが、最近強調されている「経済を成長させるためのよりスマートな規制」に基づき、規制緩和を目指すものと考えて差し支えないだろう。
保守党政権が誕生すれば、雇用審判手数料の再導入はほぼ確実であり、競業避止条項の有効期間の上限設定も推進される可能性がある。つい先週、政府はTUPE(Transfer of Undertaking (Protection of Employment)-事業譲渡(雇用保護)規則)の小改革と、(Brexit後も続いている)英国における欧州労使協議会の廃止を提案した。

また、政府は最近、パートナーが出産で死亡した場合の父親の育児休暇を強化する議員立法を支持した。現在国会に提出されている法案は、5月24日(金)までに成立を急がない限り、すべて否決される。この特定の議員法案は大きな支持を集めており、現在のところ成立の可能性のある法案のひとつであるように見えるが、残された時間は非常に短い。

2023年労働者(予測可能な契約条件)法がどうなるかは不明である。この法律は、労働者により予測可能な契約を求める権利を与えるもので、2024年秋に施行される予定だった。同法はすでに法令化されているが、新しい権利の詳細を具体化し発効させるには、更なるなる規制が必要である。労働党は、労働者に正規契約の権利を与えるというもっと野心的な計画を持っているため、同法律が無視され、より厳しい新しい法案が優先される可能性が高いと思われる。しかし、この法律の行方は依然として不透明である。

現政権にとって、健康状態に問題がある人々を仕事に復帰させることは優先事項であるため、障害者手当の変更に関する最近の提案を支持することが、保守党の選挙公約に含まれる可能性がある。同党はまた、平等法における「性別」を「生物学的性別」と再定義することを約束する可能性もある。世論調査で労働党がリードしていることを考えると、これらの公約が法律化される可能性は低いが、選挙戦で議論の対象になる可能性はある。


(C) 進行中の文化戦争の管理

新政権下で仕事の世界がどうなるかを考えるだけでなく、雇用主は選挙プロセスが職場の(不)調和にどのような影響を与えるかを考えるのが賢明だろう。従業員がソーシャルメディア上で自分の意見を発信し、自分と同じ視点や政治的嗜好を持つ人を探すことに抵抗がなくなった今、雇用主がすでに職場での言論の自由の管理に苦慮していることは理解できる。

イスラエル/ハマス戦争やジェンダー・アイデンティティ/表現に関する従業員の発言は、特に緊張を引き起こしている。雇用主は、社内のチャット・チャンネルから投稿を削除したり、ガイドラインを強化したり、あるいは従業員を懲戒処分にしたりしなければならない事態に陥っている。選挙キャンペーンは更なる対立を生む可能性があり、特にジェンダー・アイデンティティに関する質問が顕著になった場合、雇用主はこれに目を光らせ、状況がエスカレートする前に積極的に管理し、問題が発生した場合はバランスの取れた配慮ある方法で対応するよう努める必要がある。


(d) 次のステップマニフェスト

我々は、マニフェストが発表され詳細が明らかになり次第、さらなる洞察をお届けしたいと考えています。また、国際的な雇用主は2024年6月20日に開催されるManaging an International Workforce Conference(国際労働力会議)に申し込むことができます。


もしアドバイスが必要な具体的な質問がある場合、またはこの記事で取り上げた内容に関する情報が必要な場合は、Abi.Frederick@lewissilkin.com (Lewis Silkin LLP法律事務所) 又は 中田浩一郎弁護士 koichiro_nakada@btinternet.comまでご連絡をお願い致します。


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【バックナンバー】

MAY 2024 – ジェンダー批判的信念の表明を理由とする学校教諭の解雇は差別でも不当でもない

APR 2024 – 労働党が差別法の改正を計画

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FEB 2024 – ハイブリッド型の職場におけるリモートワークの申請の拒否について

JAN 2024 – 純移民数削減のための英国移民政策発表

NOV 2023 – セクハラ防止に関する新法が成立

OCT 2023 – 労働党、雇用法に関する計画を発表

SEP 2023 – 職場における読心術-良いことなのか?それとも私たちが予期しているようなこの世の終わりとなるのか?

AUG 2023 – フレキシブルな働き方-新たな法律とガイダンス

JUL 2023 – 維持されたEU法の法案化が成立:雇用主への実際的な影響は?

JUN 2023 – 労働人口の高齢化が進む中、雇用主は中高年労働者の体調不良という課題にどのように対応すればよいか


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