Aug 2024 – 無給インターンシップの禁止は雇用法実務に変化をもたらすか?
労働者の賃金を引き上げるための労働党の提案のひとつに、無給インターンシップの禁止がある。
しかし、多くのインターンがすでに法的に賃金を支払われるべきであるのに、この禁止は重大な変化となり得るのであろうか?
無給インターンシップは、何年も前からメディアの批判にさらされてきた。保守党の前政権は、無給インターンシップを対象とするいくつかの実務的な措置を講じたが、法改正という形式を通してではなかった。
2017年の外部レビューでは、政府は搾取的な無給インターンシップを排除すべきであると勧告された。
彼らの見解によると、インターンに賃金を支払うべき時期に関する現行法はすでに明確であり、全国最低賃金の執行を司るHMRCがより多くの強制措置を取ることを推奨している。
保守党政府はこの勧告に従うことを確認し、HMRCは500の企業に対し、インターンは「労働者」に分類され、最低賃金が支払われるべきであると注意喚起する書簡を送った。しかし、2020年9月にBBCが行った調査では、COVID-19パンデミックの結果、無給インターンシップが再び増加したことが報告されている。
インターンシップとはどういうものか?
インターンシップや職業体験に法的な定義はない。「インターンシップ」は様々な就労形態のラベルとして使用される傾向がある。
インターンの雇用形態は非常に重要であり、それによって彼らがどのような雇用法上の権利を有するかが決まる。「インターン」は法的地位ではなく、インターンの内容によって、従業員、労働者、ボランティアのいずれかになる可能性がある。最も重要な意味合いは、労働者と従業員だけが全国最低賃金を受ける権利があるということである。
職場体験やインターンシップの中には、合法的に無給とすることができるものもある。例えば、「ワークシャドウイング」であって実際に「仕事」を行っていないインターンは、最低賃金の対象とはならない。しかし、インターンが労働に類似した仕事を遂行することを要求されたり、インターンが労働に対して何らかの報酬(将来の雇用の約束を含む)を得ている場合は、「労働者」とみなされる可能性が高く、それに応じて賃金が支払われるべきである。
「ニューディール」はどうなるのか?
労働党の「ニューディール」は、「教育または訓練コースの一環である場合を除き、無給インターンシップを禁止する」と述べている。しかしながら、労働党が何を「インターンシップ」とみなし、新法がどのように施行されるのかは、未だ明確になっていない。
禁止の内容とは?
労働党がこのような禁止令をどのように法制化するかは正確には不明である。過去に行われた法改正の試みから、労働党が取りうるアプローチのヒントを得ることができる:
- 全面禁止:労働党は、インターンシップが教育または訓練コースの一部であるようなごく限られた例外を除いて、無給のインターンシップを全面的に禁止するとしている。従って、労働党が今後の法案で「インターンシップ」をどのように定義するかが重要となる:
- 2017年に提出された過去の法案(法制化されることはなかった)では、インターンシップを、学習目的を達成するため、またはその雇用主のもとで働く経験を積むため、あるいは職業に関する実務経験を提供する目的で、インターンが「通常の業務を請け負う、または通常のサービスを提供する」雇用慣行と定義していた。
定期的に仕事やサービスを請け負うインターンは、すでに「労働者」とみなされるので、最低賃金を受け取る権利があると考えられている。このような取り決めを明示的に禁止することは、雇用者とインターンにとってその関係を明確なものにするが、この定義を採用したからと言って、それが現行法より良い方向に進化したと考えることはできない。 - さらに2つの法案(これも法制化されることはなかった)では、「職場体験」という広い用語が使われ、「特定の職場、組織、産業、または仕事に関連する活動の経験を得ることを目的として、あらゆるタスクを観察、再現、補助、遂行すること」と定義されている。
この定義は、よりインフォーマルなワークシャドウイングを含む、より広範囲な就労形態を含むことになる。これは、企業により大きなインパクト与えることになるが、労働党が全面禁止というアプローチを選択した場合は、あまり影響のない選択肢ということになる)
- 2017年に提出された過去の法案(法制化されることはなかった)では、インターンシップを、学習目的を達成するため、またはその雇用主のもとで働く経験を積むため、あるいは職業に関する実務経験を提供する目的で、インターンが「通常の業務を請け負う、または通常のサービスを提供する」雇用慣行と定義していた。
- 期間に基づく禁止:別のアプローチとしては、一定の期間(例えば4週間)を超える無給インターンシップや職業体験を禁止することである。
これは、ヨーロッパの近隣諸国で採用されている方法と同様である。例えばドイツでは、3ヶ月を超える自主的なインターンシップの場合、一般的に給与を支払わなければならない。
禁止令はどのように施行されるだろうか?
無給インターンシップに関する報道は何年も前からなされているが、実際に労働審判が申し立てられたり、刑事訴追がなされることはほとんどなかった。権利行使は、通常、個人による申し立てや違反の告発がなされることによって行われるが、インターンは正社員よりも消極的かもしれない。インターンシップは、学生や卒業生が履歴書に書ける経験を積み、職業経験を高めることを可能にする。インターンは、正社員として雇用されたり肯定的な推薦を得ることを目的としていることが多く、特に弱い立場にある。
労働党の新政権下では、より強力な取締りが行われる可能性がある。労働党の提案のひとつに全国最低賃金取締局の導入があり、この取締局がこの業務を促進する可能性がある。同機関は職場の検査、訴追、罰金賦課の権限を有し、インターン制度の在り方がますます重視される可能性がある。
雇用主は今、何ができるのか?
最終的な法律がどのようなものになるかを待つ一方で、雇用主が今すぐできる積極的な措置をいくつか紹介しよう:
- 慣行の見直し: すべての職場体験やインターンシップを監査し、企業全体でどのような公式・非公式の職場体験が行われているかを把握する。そして、インターンがどのような仕事や学習を行っているかを調べることが重要である。
- 経費についての検討: 政府がどのように禁止を法制化しようとも、労働党の意図は社会的流動性を向上させ、すべての人材がスキルを身につけられるようにすることである。職場体験期間が合法的に無給であったとしても、雇用主は交通費、宿泊費、食事代などの費用を提供することで、すべてのインターンへのアクセスを改善することができる。
- 社会的流動性へのより幅広いフォーカス: 経費は別として、雇用主が社会的流動性を促進するためには、他のステップも有益である。企業は、社会的流動性の「コールドスポット」にある学校をターゲットにしたり、企業への参入ルートや採用前に必要な経験の幅を広げる方策を検討したりすることが有益である。
労働党の雇用改革に関する詳細は、政策ダッシュボードをご覧ください。
もし、特定のケースにおいて具体的なアドバイスが必要な場合はLewis Silkin LLP法律事務所の Abi Frederick弁護士Abi.Frederick@lewissilkin.com 、または中田浩一郎法律顧問koichiro_nakada@btinternet.comまで、ご連絡をお願いいたします。
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