
Jan 2025 – AIを活用した転職市場:ツール、メリットと課題

AIは採用プロセスに革命をもたらし、企業が候補者を惹きつけ、評価し、選考する方法を向上させている。本記事では、AIがどのように活用されているのか、AIを活用した採用判断の今後の方向性、そして雇用主がそれに伴って直面する課題について検討する。
採用プロセスにおけるAIの活用状況
- 広告: アルゴリズムは、求人広告のターゲットを絞るために採用プロセスの最初から利用することができる。例えばLinkedInでは、応募者のプロフィール情報をもとに、スキルやその他の求人条件とマッチングさせるアルゴリズムが使われている。また、求人広告におけるジェンダーバイアスのある表現を是正するためのAIツールも開発されている。
- スクリーニング: アルゴリズムは、候補者を絞り込むための履歴書の初期スクリーニングにも使用できる。例えばTextkernelは、アルゴリズムを使って履歴書や求人情報からの情報を解釈し、求人情報の要件と候補者の過去の経験の類似性に基づいて候補者をフィルタリングし、ランク付けし、マッチングする。
- 評価: 次の段階では、AIを使用して、求職者が記入したアセスメントを採点し、職務に関連する特性、スキル、能力を測定することができる。これは、チャットボット面接、ビデオ面接、さらにはゲームシナリオを通じて行うことができる。
このテクノロジーを利用しているのは、主に超大規模組織であることが調査で明らかになっている。プラットフォームは米国のテクノロジー企業によるものが多く(ギリシャに本拠を置くBryq社など。)、必ずしもそうとは限らないが、米国資本の企業がその採用をリードしている。そして、その利用は増加傾向にある。2024年4月、米国の人事機関SHRMが会員を対象に実施した調査では、4人に1人が採用を含む人事関連の活動を支援するためにAIを利用していると回答した。また、ハーバード・ビジネス・レビュー・アナリティカル・サービスによる2024年の調査では、回答者の52%が採用プロセスに何らかの自動化を導入していることがわかった。
採用以外でのAIの利用
これまでAIが最も活用されてきたのは採用活動だったが、その状況は変わり始めている。アルゴリズムが、社内での異動において最適な人材を特定するためにも使用されている。その一例がFuel50社だ。Fuel50社は、この市場では数少ない非米国企業のひとつで、ニュージーランドのオークランドに本社を置いている。同社は組織全体のスキルマップを作成し、現在の役割ではなく、そのスキルに基づいて自動的に個人を特定、募集中の役割とマッチングする。
アルゴリズムは、特にUberのようなプラットフォーム・エコノミーにおいて、仕事の割り当てに使われている。また、昇格、退職者の選定、ボーナスなど、給与の設定や業績の評価にも利用されている。Beqomのタレント・インテリジェンスは、機械学習が給与設定に使われている例で、予算、目標、給与の公平性を最適化するためにアルゴリズムが使われている。Zavvy AIは、データに基づいたパフォーマンス管理を提供するAIの一例である。
AIの利用を採用プロセスからキャリアや報酬の決定にまで拡大することは、法的訴訟の増加につながる可能性が高い。これにより、雇用決定をサポートするAIの潜在的な利益と、そうした判断の対象者に対する適切な保護とのバランスをとるようなAIに特化した規則への移行が求める圧力が高まるだろう。これは、米国ではすでに起こっていることで、ニューヨーク市の地方法では、昇進や採用に使用される自動雇用決定ツールの独立したバイアス監査を義務付けている。

AIの利点と課題
利点
AIによる職場の意思決定がもたらす潜在的なメリットは明らかだ。AIがより迅速で効率的な決定を下し、雇用主がかなりの金額を節約できるだけでなく、意思決定がより優れたものになり、差別的でなくなるという証拠がいくつかある。実際に、人間のバイアスを克服することは的を絞った訓練を受けたとしても非常に難しいが、アルゴリズムのバイアスは監査し、軽減することができる。
さらに、人間の意思決定とは異なり、AIのプロファイリングは「局所的に説明可能」である。つまり、候補者を採点する際に適用された要素や重み付けが潜在的に利用可能であり、決定が下された真の根拠や、不当な差別がどこで生じたかを特定できる。
課題
これらの潜在的な利点を活用するには、課題を認識し対処する必要がある。
候補者によるAIの利用: 求職者が生成AIツールを利用して履歴書(CV)やカバーレターの作成、質問への回答、さらにはプロフィール写真の作成までするケースが広く認識されている。例えばHeadshotproがその一例だ。しかし、その結果、目立たない一般的な応募書類になってしまうリスクや、システムを悪用している可能性のある候補者の真の姿を雇用主が把握できないリスクがある。一方で、過剰に疑念を抱く雇用主が、応募者がAIを使用していると誤って非難し、応募者を選別してしまうリスクもあり、その結果優秀な人材を見逃してしまうリスクもある。しかし、ゲームベースの評価やワークサンプルテストなど、テキストベースではない評価方法は、より偽造に強い。
AIの安全性: 懸念事項の中で重要なのは、意思決定におけるバイアスや差別のリスク、そしてAI利用がデータプライバシー法に違反するリスクである。規制が策定される管轄範囲は多岐にわたるが、このリスクに対処するための共通のメカニズムが出現している。これには、監査と監視プロセスの義務化、決定に異議を申し立てる権利、影響評価を実施する必要性などが含まれる。AIの利用が採用活動以外にも広がるにつれ、法的なクレームや訴えのリスクは高まるだろう。採用におけるAIの安全性は、政府のガイダンスでも取り上げられている。
信頼: 優秀な人材の獲得と維持には、信頼の維持が必要である。採用、特に報酬やキャリアに関する決定など、雇用の意思決定にAIを活用する雇用主は、その利点を従業員に説得する必要があり、そのためには透明性と協議が必要となる。AI法は、自動化されたツールが彼らの評価や監視に使用されていることを候補者や従業員に知らせるために、透明性や通知要件を課すようになってきているが、HireVueやBeameryのような一部のベンダーは、さらに一歩進んで、自社のツールがどのように機能し、どのようなテクノロジーに依存しているかについて詳細に説明するAI説明可能性ステートメントを公表している。
今後の展望
AIの採用プロセスや幅広い雇用判断への統合は、大きな機会と課題の両方をもたらす。テクノロジーが進化を続け、雇用判断への利用が拡大するにつれて、法的な枠組みもそれに応じて適応していく可能性が高い。労働党新政権の下での今後の規制の可能性は高く、特にAI主導の意思決定が公正で透明性があり、説明責任を果たすものであることを保証しなければならないという圧力が高まっていることを考えると、その可能性は高い。この規制の進化は、AIの利点と個人の権利保護をバランスさせ、職場での責任ある倫理的なAIの利用を確保する上で重要である。
もし、特定のケースにおいて具体的なアドバイスが必要な場合はLewis Silkin LLP法律事務所の Abi Frederick弁護士Abi.Frederick@lewissilkin.com まで、ご連絡をお願いいたします。

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