Nov 2023 – セクハラ防止に関する新法が成立

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セクシャルルハラスメント(セクハラ)防止に関する新法が勅許を得た。雇用主は何を知る必要があり、今何をすべきか?


労働者保護法(平等法の改正法)は、セクハラから従業員を保護する雇用主の義務に関する法律を大幅に改正するものである。


新しい法律とは?

従業員に対するセクハラを防止するために「合理的な措置」を講じる義務が新たに設けられた。これは、平等法で定義されているセクハラに適用され、「性的な性質」を持つ望まない行為を意味する。この法律は主に女性を保護するために導入されたが、すべての性別の人に等しく適用される。

同法は既に、雇用主がハラスメントの発生を防止するためにあらゆる合理的な措置を講じたことを証明できれば、ハラスメントの申し立てに対する抗弁を規定している。これは、そのような措置を講じることが望ましいということを意味するが、実際にそうしなければならないという義務ではなかった。新法は、セクハラを防止するための積極的な措置を講じる新たな法的義務をすべての雇用主に課すことで、これを更に推し進めるものである。


何が変わっていないのか?

新しい義務はセクハラにのみ適用される。人種、年齢、性的指向、信条など、その他の保護される特性に基づくハラスメントには適用されない。また、性別に関連するが、性的な性質の行為ではないハラスメントには適用されない。


「合理的な措置」とは?

新法にはこれに関するガイダンスはない。平等法における雇用者の抗弁は、雇用主が差別やハラスメントを防止するために「すべての合理的な措置」を講じた、という類似の文言を用いている。この「すべての」という文言は、国会審議の過程で新義務から削除されたため、この閾値はやや低くなっている。とはいえ、雇用審判所は、これを現行の雇用者の抗弁と同様に解釈する可能性が高いと思われる。


どのように執行されるのか?

新法で規定された義務違反の請求は雇用審判所において行うことができるが、セクハラの請求と平行して別途同時になさればならず。独立した請求とはならいない。従業員がセクハラ請求に成功し、雇用主がセクハラト回避するための合理的な措置を講じる義務に違反したと認められた場合、雇用審判所は賠償金を最大25%増額することができる。これはセクハラがあった場合にのみ適用されるものだが、増額自体はハラスメントの種類に関係なく、すべての賠償金に適用される。従業員が複数のハラスメントの請求に成功した場合、これは高額になる可能性がある。

この義務は、平等人権委員会が、調査を含む既存の執行権限を用いて執行することもできる。これまで、平等人権委員会はその執行力をほとんど行使してこなかったが、今後その傾向が変わるかもしれない。


新法はいつ施行されるのか?

新法は2023年10月26日に勅許を受け、その1年後に施行される。


これ以上のガイダンスはあるのか?

平等人権委員会は、2020年1月に発表した職場におけるセクハラとハラスメントに関する厳密なガイダンスを、新義務を反映したものに更新する予定であることを示唆している。


雇用主は、第三者による従業員へのハラスメントに対処する必要があるか?

第三者によるハラスメントは新法では特に禁止されていないが、この問題を無視することはできない。現行法の下でも、第三者によるハラスメントに関する訴えを無視し、弱い立場の従業員を危険にさらし続けた場合、雇用主は差別やハラスメントの責任を負うリスクがある。また、法的リスクとは関係なく、従業員への職場でのハラスメント防止を怠るのは、断じて良き慣行とは言えず、信用と評判を落とすことにもなりかねない。


労働党政権下で状況は変わるのか?

労働党の貴族院議員は新法の改正を支持したものの、ソーントン氏は、労働党政権がこの問題に立ち戻らないと約束することはできないと述べた。それ以来、労働党副党首であるアンジェラ・レイナー氏は、労働党は第三者のハラスメントに対する具体的な賠償責任を再び導入すると述べている。また、セクハラを防止するために「すべての」合理的な措置を講じることを義務化するとしている。労働党が次の選挙で勝利すれば、更なる変革が早期に訪れそうだ。


今なすべきことは?

法律が改正されるのは2024年10月ではあるが、セクハラを防止するための合理的な措置を講じていることを示せるよう、今すぐ対策を打つべきである。これはまた、あらゆる種類のハラスメントを防止するために、全ての合理的な措置を講じていることを示すのにも役立ち、DE&I((diversity, equity, and inclusion: 多様性、公平性、インクルージョン)イニシアチブの価値ある部分であると同時に、訴えの抗弁にも役立つ。

いくつかの重要なステップは以下の通り:

  • あらゆる形態のハラスメント関連の訴えに対しての主要報告登録簿を作成または更新する
  • ハラスメント防止規定を更新、再配布し、規定が平等だけでなくインクルージョンにも重点を置くようにする
  • 従業員がハラスメントの脅威を回避し、ハラスメントの証言をする人(目撃者)が被害者に安全に介入したり支援したりできるよう、状況に応じた最新の研修を実施する。「陳腐な」研修や、単なるチェックボックスエクササイズ(官僚主義的確認手続き)は、ハラスメントを防止するための合理的なステップとは見なされにくい
  • リスク要因を特定し、どのような行動を取ることができるかを明らかにするために、的を絞ったリスクアセスメントを実施する
  • ハラスメントに関する訴えを報告する明確な方法を確保し、たとえそれが記録に残るものであっても、すべての訴えが調査され、効果的に処理されるようにする
  • 顧客とスタッフが接する場所に、脅迫、暴力、ハラスメントは容認されないことを説明する目に見える掲示物を設置したり、目撃者がスタッフの受けたハラスメントの事例を報告する手段を提供したりするなど、第三者に関する措置を講じることを検討する

既存のガイダンスだけでなく、今後予想される平等人権委員会の法定行動規範からの新たな要件を織り込むことも重要だろう。


アドバイスが必要な具体的な質問がある場合、またはハラスメントに関する職場研修に関する情報が必要な場合は、Abi Frederick Abi.Frederick@lewissilkin.com (Lewis Silkin  LLP法律事務所)又は弁護士 中田浩一郎 koichiro_nakada@btinternet.com に連絡をお願い致します。


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