Jan 2023 – 2023年は地球優先で:人事にとっての新年の気候変動に対する抱負

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ネット・ゼロを目指す企業全体の取り組みにおいて、全企業が重要な役割を担っている今こそ、人事部が率先して行動する絶好の機会である。ここでは、気候変動への取り組みを職場文化に根付かせ従業員が行動を起こせるようにするための、実践的な「新年の気候変動に対する抱負」をお届けする。


報告によると、二酸化炭素排出量を2030年に1990年比で少なくとも68%削減するという英国の中間目標に対する達成の見込みはないとのことだ。しかし、気候変動はZ世代とミレニアル世代にとって依然として最大の関心事であり、最近のある調査では約半数が雇用主にもっと努力するよう働きかけていると回答している。新年を迎え、気候変動への取り組みは、あらゆる雇用主にとって重要な課題であることは間違いない。


1. 気候変動に関するトレーニングの実施

従業員が職場や家庭での日常生活で責任ある選択ができるよう、気候変動の影響について教育することを検討する。現在、様々な企業向け教育・トレーニング企業があり、また、このトピックに関するリーダーシップ・トレーニングも検討の意義がある。また、Climate Fit社は、中小企業の二酸化炭素排出量削減を支援するための無料オンライントレーニングコースを提供しており、このコースはケンブリッジ大学サステナビリティ・リーダーシップ研究所とBSRが共同で開発したものである。「国連グローバル・コンパクト・アカデミー」は、国連グローバル・コンパクトのデジタル学習プラットフォームで、企業が持続可能な開発目標を実現するために役立つ実用的な見識とベストプラクティスを提供している。このアカデミーは国連グローバル・コンパクトの会員向けに作られているが、一部のeラーニングコースは一般に公開されている。

企業が国連グローバル・コンパクトの会員であれば、若い有能な人材(35歳以下)に対し、各組織が直面するサステナブルな課題に取り組み、解決していく9ヶ月のプログラムであるSDGs Innovation Accelerator for Young Professionalsへの応募を奨励することも検討できる。


2. 新しいテクノロジーソリューションの探求

Z世代とミレニアル世代は、雇用主が、従業員にとって直接関与できる視覚的な気候変動対策に優先的に取り組むことを望んでいる。オランダでは、ユトレヒト図書館やスキポール空港で既に「自転車デスク」が導入されており、自転車を漕いで発生する運動エネルギーで電子機器の充電が出来るようになっている。メーカーによると、30分ほど自転車を漕ぐとiPhoneがフル充電されるそうだ。(自転車デスクは、従業員にとっても仕事の合間に運動ができるメリットがある)


3. 社員食堂とケータリングにおけるサステナブルフード

ベジタリアン食は肉食に比べて二酸化炭素排出量が2.5倍少ないという調査結果がある。週のうち何日かは、社員食堂やケータリングで肉を使わないようにしてはどうだろうか?また、地元や地域のサプライヤーの利用を増やすことで、流通や供給による排出量も減らすことが出来る。食品廃棄物もまた、世界の温室効果ガス排出量の約8〜10%を占める重要な問題である。廃棄物監査を行い、FareShareやWRAPなど、余剰食品を再分配する組織と提携することも検討の意義がある。


4.「より環境にやさしい通勤週間」の試み

より環境に配慮した行動を促すために、従業員がより持続可能な交通手段を利用するよう奨励する週間を設けてみてはどうだろうか。以下の通勤手段のうちより二酸化炭素排出量の少ないものに変更したり、可能であれば徒歩や自転車で通勤するのもよいだろう。

交通手段1km当たりのCO2eグラム
(Statista and Transport for Londonによるデータ)
一般のタクシー208.26
一般の自動車 (ディーゼル)170.8
一般の自動車 (ガソリン)170.48
一般の自動車 (ハイブリッド)120.04
一般のオートバイ113.55
一般のフェリー112.86
一般の路線バス102.27
一般の自動(BEV)51.4
ロンドンの地下鉄44
ナショナル・レール35.49
長距離バス27.33
一般の電動自転車14.8

また、国連のカーボンフットプリント計算機を使って、家庭や交通機関、ライフスタイルの二酸化炭素排出量の追跡を従業員に奨励することもできる。


5. スコープ3排出量の把握

スコープ1とは企業が直接排出するもの、スコープ2とは企業が購入するエネルギーに関するもの、スコープ3とは企業がそのバリューチェーンの上下において間接的責任のあるその他の排出を全て含むものである。 スコープ3は、ほとんどの企業が排出する二酸化炭素の中で最も大きな割合を占めており、その削減は英国が国際合意された気候変動目標を達成するために不可欠なものである。人事部は、従業員の通勤、出張、オフィス用品の購入、年金制度などの福利厚生に関するカルチャーに影響を与えることで、スコープ3の排出量に大きな効果をもたらすことが出来る。スコープ3排出量を今すぐ把握することで、改善点を知ると共に削減目標の設定が出来、最終的にはより正確に進捗を測定することが可能となるが、これについてはGreenInsightやEcometricaなどの外部プロバイダーが支援している。


6. オフィスにおける従業員一人一人の責任の推進

雇用者として、気候変動に対する意識を組織内の文化に根付かせ、従業員の責任ある行動を可能にするには、次のような方法がある。

  • リサイクルボックスがオフィス内にきちんと配置されているか確認し、従業員がリサイクルのルールを理解できるよう明確に表示する
  • コップ、カトラリー、ファイルの仕切りやタブなど、使い捨てのプラスチックを排除する
  • 必要なとき以外は印刷をしないことを提唱する。また、「両面印刷」をデフォルトのオプションとして設定し、100%再生紙またはFSC認証紙と無溶剤のプリンターインクを使用する
  • 持続可能なオフィス用品と女性用トイレ衛生用品を提供する

7.   環境チャリティーのパートナー

年間パートナーとして、もしくは特定のイベントの際に、今年は環境チャリティーをサポートしてみてはどうか?企業内の気候変動に対する意識を高め、従業員が積極的に行動するよう動機付ける絶好の機会となる。以下はその一例。

  • The Wildlife Trusts
  • Friends of the Earth
  • Green Alliance
  • WWF
  • Rainforest Alliance

また、地域の慈善団体やゴミ拾いグループと一緒にボランティア活動をする日を設けるなど、従業員が腕まくりをして地域社会に恩返しすることの奨励も出来る。


8. 環境にやさしい休暇取得に対するインセンティブの供与

新年は、通常従業員が夏休みの予約を検討し始める時期である。休暇中に環境に配慮した旅行をするよう、従業員にインセンティブを与えることを検討したことはあるだろうか?例えば、飛行機を利用しない従業員や、休暇中も英国に滞在する社従業員には、年休を1日多く与えるという方法が考えられる。


9. オフィスの温度と服装の調整

オフィスの温度を少し調整出来ないか考えてみてはどうか?サーモスタットを1度下げると、3LDKの住宅で1年間に300kgの二酸化炭素を削減出来ると試算されており、大規模なオフィスであれば、更に大きな削減効果を得ることが出来る。しかし、女性の場合、気温が低いと生産性が低下するという調査結果があるため、変更を行う前にその影響を評価する価値がある。

また、エアコンは温室効果ガスの大きな要因でもあるため、気温が一定の基準値を超える夏のピーク時に、冷房の使用を制限することを検討してはどうだろうか?ドレスコードがあるオフィスでは、夏場はより柔軟に対応することで冷房の必要性を減らすことも検討すべきである。


10. 出張の持続可能性の評価

出張願いの評価指標にサステナビリティを含め、その監視担当を任命することを検討する。例えば、出張回数を減らす、出張をビデオ会議に置き換える、環境に配慮した出張業者や宿泊施設を選択するなど、何らかの二酸化炭素削減が可能であると判断出来る。また、カーボンオフセット・プログラムの導入も検討するとよいであろう。


もし、上記の件に関連して、特定のケースについて具体的なアドバイスが必要な場合は、Lewis Silkin LLP法律事務所のAbi Frederick Abi.Frederick@lewissilkin.comまたは 中田 浩一郎koichiro.nakada@lewissilkin.comまで、ご連絡をお願いいたします。


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